パリとウィージャンズ

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パリと題につく歌は、少なくないですよね。たとえば、『パリの四月』。原題もまた、『エイプリル・イン・パリス』。1931年のヒット曲。
エドガー・イップ・ハーバーグ作詞。ヴァーノン・デューク作曲。もともとはミュージカルの中の一曲。『ウォーク・ア・リトル・ファスター』の劇中歌。
♬栗の花は咲き 木陰に休日を人びとのテーブル…………。
サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルド、フランク・シナトラ…………。実にたくさんの歌手が歌っています。が、かなり音域の広い歌でもあって、やはり老練の歌い手にお似合いのようですが。
あるいはまた、『パリのアメリカ人』。いうまでもなく、ジョージ・ガーシュウィンの名曲ですよね。『パリのアメリカ人』はいわば「紀行曲」のようにもの。ジョージ・ガーシュウィンは実際にパリに行って、その時の感想を曲に仕上げているのですから。ガーシュウィンのパリでの印象のひとつに、タクシーのクラクションの音があった。なんとかあのクラクションの音を活かしたいものだ、と。
パリ滞在中のある日、ガーシュウィンは言った。
「どうしても、グランダルメ街に行きたい」。
当時のグランダルメ街は、自動車の部品屋が立ち並んでいるだけの場所。ガーシュウィンはそこに行って、クラクションの音を聴き較べて。
なんとガーシュウィンのパリ土産は、多くの、かさばる、クラクションだったのです。初期の『パリのアメリカ人』の演奏で用いられたクラクションの音は、ガーシュウィンが持ち帰った「パリのクラクション」だったのです。
『パリのアメリカ人』が、映画化されたのが、1951年のこと。ヴィンセント・ミネリ監督、ジーン・ケリーの主演で。
1951年、アイルランドに生まれたのが、ケン・ブルーウン。ケン・ブルーウンが2002年に発表したのが、『酔いどれ故郷にかえる』。この中に。

「キキに買ってもらったウィージャンズのモカシン。」

これは物語の主人公で、私立探偵の、ジャック・テイラーの靴なんですね。
「ウィージャンズ」 Weejuns はもともとアメリカ、「バス社」の登録商標名。ウィージャンズのはじまりは、1936年。
ある日、「エスクワイア」誌の編集者が「バス社」にやって来て。アザラシの革で作ったモカシンを見せてくれた。それを基に「バス社」で完成させたのが、今のコイン・ローファーなのですね。
そのアザラシのモカシンは、ノルウエイ製だった。英語の「ノーウィージャン」Norwegan から、「ウィージャンズ」の商品名が生まれたのです。たまにはウィージャンズも、履いてみたいものですね。

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