メルローズという地名があるんだそうですね。スコットランドに。メルローズは、スコッティッシュ・ボーダーズの、ほぼ中心にあります。
スコットランド、メルローズに住んだお方に、サー・ウオルター・スコットがいます。あの『湖上の美人』の名詩で知られる、ウオルター・スコットであります。スコットは、晩年に至るまでの長い間、メルローズの「アボッツフォード邸」に住んだものです。
1822年に英国王、ジョージ四世がスコットランドを訪れた時、完全なるスコットランド衣裳に身を包んでいます。ジョージ四世に、スコットランド衣裳を着るよう進言したのが、ウオルター・スコットだったのです。もしスコットがいなければ、ジョージ四世のスコットランド衣裳はあり得なかったでしょう。
サー・ウオルター・スコットに心酔したのが、アメリカの作家、ワシントン・アーヴィング。ワシントン・アーヴィンは、1820年頃、ウオルター・スコットを訪ねて、スコットランド、メルローズの「アボッツフォード邸」に赴いています。
ワシントン・アーヴィングは、1809年に、『ニューヨーク史』を書いています。この『ニューヨーク史』から生まれた言葉が、「ニッカーボッカーズ」なのです。
ワシントン・アーヴィングは、物語として、「ディートリッヒ・ニッカーボッカー」の記録との設定で創作したからです。
メルローズが出てくるミステリに、『木曜日の子供』があります。1991年に、テリー・ホワイトが発表した物語。
「キャムデン・ハントという男だ。メルローズで骨董品店を経営している。」
もっともこの「メルローズ」はアメリカ西海岸の、メルローズなのですが。『木曜日の子供』には、こんな描写も。
「白いメキシカン・ウエディング・シャツを着て、腕には黄金のチェーンを………………」。
これは、ボー・エプスタインという人物の様子。「メキシカン・ウエディング・シャツ」は、ゆったりとしたプル・オーヴァー型のシャツ。胸元に深い切込みがあって、そのまわりを「コ」の字形に鮮やか刺繍をあしらったシャツのこと。
たしかに西海岸のメルローズには、メキシカン・ウエディング・シャツはお似合いでしょうね。