ハギスは、スコットランドの名物料理ですよね。ハギス haggis はスコットランドでは、ごく一般的な料理であります。ところがスコットランド以外ではあまり珍重されることの少ない料理でもあるでしょう。
いや、そればかりかスコットランド料理を揶揄する時、必ず例に出されるのもまた、ハギスであります。ハギスの語源は、「切り刻む」。日本でいうミンチに近いものでしょう。羊の内臓をミンチにしての、腸詰。
スコットランドの国民的な詩人、ロバート・バーンズはハギスのことを、「腸詰の大親分よ」と、呼びかけています。『ハギスに寄せる』という詩の中で。
私たちも腸詰はよく食べる。また、美味しいものです。それなのに、どうしてハギスだけが別種とされるのでしょうか。
ロバート・バーンズといえば、毎年の1月25日は「バーンズ・ナイト」で、偉大なる詩人を祝うことになっています。このバーンズ・ナイトに欠かせないのが、スコッチ・ウイスキーと、ハギス。ハギスには必ずウイスキーを添えることになっています。
ハギスがお好きだったイギリス人に、オーウェルがいます。『動物農場』で知られるジョージ・オーウェル。
「イギリスの外でハギスにお目にかかった経験はないし………………」。
オーウェル著『イギリス料理の弁護』の中に、そのように書いています。まあ、ジョージ・オーウェルのお父さんはスコットランド人でもありましたし。事実、オーウェルは晩年、スコットランドに住んでもいます。スコットランドの孤島、ジュラ島に。
1946年8月17日。スコットランド、ジュラ島からシーリアに宛てた手紙の一節に。
「リチャードは、いまではちゃんとした半ズボンを穿いて ー よその子の着古しですが ー ズボン吊りもしています。」
半ズボンに、ブレイシーズ。いいですねえ。さて、半ズボンにブレイシーズですが、ハギスと参りますか。