タオルは一枚あると、便利なものですよね。手を拭くにはハンカチもあるでしょうが。風呂からあがって身体を拭くには、ハンカチでは間に合いません。
でも、どうしてタオルで身体を拭くのか。もちろん水をたくさん吸ってくれるから。どうしてタオルは水をたくさん吸ってくれるのか。それタオルの表面が輪奈になっているから。
糸がループ状なので、糸量が多い。これを「テリー・クロス」と呼ぶのは、ご存じの通り。
ヴェルヴェットももともと、輪奈織物。輪奈織物のループを切り開くことで、あの美しい毳が生まれて天鵞絨となるのです。ただし、ヴェルヴェットが絹であるのに対して、テリー・クロスは綿という違いはありますが。
英國でのテリー・クロスは、1850年頃、ヘンリー・クリスティが完成させたと、伝えられています。トルコなどには、それ以前にもテリー・クロスに似た織り方はあったようですが。
三島由紀夫もまた、自分専用のタオルを使ったようですね。いや、『假面の告白』からの推測なのですが。
「ちやうど旅行の案内書、タオル、歯刷子と歯磨き、着替のシャツ…………………。」
これは「私」が旅支度をしている場面。戦争中のことではありますが、自分のタオルは自分で用意する習慣だったものと、思われます。
タオルが出てくる小説に、『刈りたての干草の香り』があります。2008年に、ジョン・ブラックバーが発表した物語。
「鏡に姿を映した。タオルに手を伸ばして振り返ると、トニーが見ているのに気がついた。」
これは、「マーシャ」が風呂から出たところでの様子なんですが。
『刈りたての干草の香り』には、こんな描写も出てきます。
「ダーク・スーツを着て、黒っぽいネクタイを上等な金のタイピンで留めている。」
これは「ウォルター・ハーン博士」の着こなし。
なにかタイ・ピンを挿して、リネンのタオルを探しに行くとしましょうか。