アクセントとアラン・ニット

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アクセントにも、いろんな意味があるんでしょうね。
そのなかのひとつに、「語調」があります。たとえば、「ありがとう」。ありがとうの言葉を口に出すとき、どこにアクセントを置くのか。「アりがとう」なのか、「ありがとトう」なのか。
「ありがとう」そのものは同じ言葉なのですが、アクセントの揺らぎによって、その印象が変ってくることがあります。
これもひとつの例ですが、関東語と関西語とでは、はっきりとアクセントが異なるものです。その人の話し方に耳傾ければ、関東出身なのか、関西出身なのかが分かること、少なくありません。
さらには、「しんき」の音を口から発するとして、「新規」であるのか、「辛気」であるのかによって、まったく違った意味になります。それもこれもすべてはアクセント次第なんですね。

「控えようとするがどうしても隠し切れない大阪訛りのアクセントで三人を代表した一人が口を切った。」

石川達三が、昭和十年に発表した『蒼氓』の一節に「アクセント」が出てきます。
石川達三は、明治三十八年。秋田県、横手に生まれています。『蒼氓』は、第一回の芥川龍之介賞を受けた小説なのですね。

アクセントが出てくるミステリに、『地下迷宮の魔術師』があります。2012年に、イギリスの作家、ベン・アーロノヴィッチが発表した物語。

「彼は標準的なBBCのアクセントのようなしゃべり方で、上流の人間がパブリック・スクールに通ったことを知られまいと意識しすぎた場合にそうなることが多い。」

上流階級には上流階級の、ご苦労があるんですね。
『地下迷宮の魔術師』には、こんな描写も出てきます。

「厚手のダークブルーのスーツに、それと合わせたアラン編みのセーター、そして重厚で飾りのない茶色の編み上げ靴といういでたちだった。」

アラン Ar an はもともとアイルランドの島の名前。正しくは、「アラン・アイランズ」。
三つの島が並んでいるので。
アラン・ニットは、三本の編み棒で編みます。
アラン・ニットの特徴的なオフ・ホワイトは、地元では「バウニーン」と呼ばれています。
b a in in と書いて、「バウニーン」と訓むのです。また、小さな球状の編み柄は、「ボブル」b obbl e と言います。
どなたか極太のアラン・ニットを編んで頂けませんでしょうか。

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