卵でつくるもののひとつに、卵酒がありますよね。酒を温めまして、その中に卵の黄身を。これを飲むと、身体が温まって、元気になる。
卵酒に似たものは、西洋にもあるんですってね。たとえば、エッグノッグ。エッグノッグにはふつうラムやブランデーを使うんだとか。そこに卵の黄身と砂糖を加えて仕上げる。
ところで、どうしてエッグノッグ eggnog なのか。エッグは分かるとして、「ノッグ」とは。
エッグノッグの「ノッグ」は、nogg とも綴ったんだそうです。これは英国、ノーフォーク州に伝わるビールのことらしい。ひとつの想像として。ビールであるところの「ノッグ」の飲み方として、卵の黄身を加える方法があったのかも。そういえば、ギネスに卵の黄身というのは、よく聞きますよね。
エッグノッグが出てくるミステリに、『Yの悲劇』が。1932年に、エラリー・クイーンが発表した物語。
「こんな卵酒をつくらせたりするのも、エミリー婆さんのハイカラ趣味からきていた。」
エミリー・ハッターは、NYの一等地に住む富豪夫人という設定。この物語には、ドルリー・レーンが登場。元俳優の、レーン探偵役になるんですね。では、ドルリー・レーンはどんな恰好なのか。
「すずしげな麻の服に、レグホンの帽子、白靴、それにたずさえた籐のステッキといういでたち。」
これは6月5日( 日 ) の午前十時と記録されています。ドルリー・レーンは、たぶん白麻のスーツなんでしょう。
ところで、「レグホン」とは何か。勝手な想像ですが、「白い麦藁帽」かと。レグホン Leghorn 。これはイタリア、リヴォルノのこと。ここの白い鶏が有名だったんですね。レグホン種の鶏は卵も美味しくて。
おやおや、麻の話が卵の話になってしまいましたね。