キャンヴァスは、布地のことですよね。布地ではありますが、よく油絵にも用いられます。
油絵がキャンヴァスの上に描かれることが多いのは、言うまでもないでしょう。画材屋にいきますと、いろんなサイズのキャンヴァスが並んでいます。
この絵を描くためのキャンヴァスを自作したのが、藤田嗣治。もともと藤田嗣治は手先が器用なお方でもありましたから。
藤田嗣治は既成のキャンヴァスでは満足しなかったのでしょう。木枠を作り、特製のキャンヴァスを張った。ここから世にいう「乳白色」と呼ばれる絵が生まれたのですが。
藤田嗣治は裁縫もまた、お上手だった。1929年に『自画像』を描いています。この『自画像』は、藤田嗣治が裁縫している様子が描かれているのです。
黒いズボンに白いシャツ。胡座を組んだ左膝に、赤い針山を乗せています。たぶんご自分のシャツなのでしょう、手縫いで縫っています。
藤田嗣治が巴里に着いたのは、1916年11月のこと。
ある雪の日。藤田嗣治は、カフェ・ラ・ロトンドで、ある女に逢って、一目惚れ。で、藤田はどうしたのか。
すぐにアトリエに戻って。ブラウスを縫う。それはウルトラ・マリンの絹地だったという。その手製のブラウスを彼女に贈って、仲良くなったという。彼女の名前は、フェルナンド・バレー。藤田嗣治にとって巴里での最初の恋人でありました。
キャンヴァスが出てくるミステリに、『ステラの遺産』があります。1995年に、バーバラ・ヴァインが発表した物語。
「キャンバスは木枠に留めてあるだけで、額はなく、もちろんそれを覆うガラスもない。」
これはネッド・サラマンが、ステラ・ニューランドの屋敷を調べている場面でのと。
また、『ステラの遺産』には、こんな描写も出てきます。
「ステラのドレッシングガウンは、襟と袖口を赤いサテンで縁どりした黒いサテンのキルティングで………」。
「キルティング」 quilting は、よく用いられる手法ですよね。
「刺し子」の一種なので、「キルティング」。生地と生地との間に「綿」を挟むので、保温性が高められるのでう。
一般に、グースダウンの毛が優秀だとされます。それも寒い地方に棲むグースほど高品質だと考えられているのです。
しかもフェザーではなく、ダウン・ボールだけを使用したキルティングは、最上だとされます。
どなたか極上のキルティング・ジャケットを仕立てて頂けませんでしょうか。