トニオは、人の名前にもありますよね。ふつうTonio と書いて「トニオ」なのでしょうか。同じ名前でも「トーニオ」と呼ばれることもあるようですが。
題にトーニオとつく名作に、『トーニオ・クレーゲル』があります。1903年に、ドイツの作家、トオマス・マンが発表した中篇です。
『トーニオ・クレーゲル』は、一種の自伝的小説にもなっています。ただ、私は勝手にファッション小説として読んだものですが。
「瞑想的な青い目の、いつも野花を胸のボタン穴にさしていた彼の父親は」
たぶん、この時代のトオマスのお父さんも、ブートニエールを挿していたものと思われます。
「絹の黒いフロックコートはなんと見事にその太った腰にぴったりと合っていたことだろう。ズボンは柔らかな襞を作ってエナメル靴の上に垂れ、エナメル靴は幅の広い繻子リボンで飾られていた。」
これはダンス教師の、クナークという人物の着こなしについて。
トニオが出てくる日記に、『ジッドの日記』があります。
「トニオ・ド・サン=テグジュペリがブエノス・アイレスの高級ホテル夕食をとっていた時、ニュースが聞こえ始めた。」
1931年3月31日の『日記』に、ジッドはそのように書いてあります。
また、1923年6月17日の『日記』には。
「彼の家でマリー・ローランサン(灰色とアーチチョークの緑の、前の大きくあいた一種のセーターを着た彼女は美しかった)と、彼女にその成功を知らせに来たセルトに会った。」
これはポオル・ヴァレリーの家でのこと。
マリー・ローランサン、たぶん「トリコ」tricot をお召になっていたのでしょうね。
どなたかグリーンとグレイのトリコを編んで頂けませんでしょうか。