蛤とハイネック

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蛤は、二枚貝のことですよね。ぴったりと重なった貝殻の間に身が入っています。
浜栗から、「蛤」の言葉が生まれたとも言われているのですが。
蛤は、ただ食べるだけでなく、昔はおしゃれとも関係があったらしい。たとえば、紅の器などにも。蛤の空いた殻に紅などを入れておいて。あとは水刷毛で溶かして、化粧品にしたんだそうですね。
あるいはまた、「絵合せ」。貝殻の裏に絵を描いておいて、これを集めて遊んだんだそうです。二枚貝だからこその遊びなのでしょう。

蛤はどんなふうにして食べるのか。たとえば、焼き蛤。七輪に炭をおこして、焼く。口の開いたところか、汁をこぼさないように。これだとやはり御酒が欲しくなって参ります。あるいは、蛤鍋。
蛤鍋の出てくる小説に、『冷笑』があります。明治四十三年に、永井荷風が発表した物語。

「名物の蛤鍋と湯豆腐に空腹の熱燗を加へて………」

これは吉原に近い、平野橋の小料理屋でのこと。さすがは荷風先生、粋でございますねえ。蛤鍋はふつう味噌仕立てにしたもんだそうですが。
蛤鍋が出てくる随筆に、『天丼 はまぐり 鮨 ぎょうざ』があります。俳優の池部 良のエッセイ集。この中に。

「ありますよ。焼き蛤、時雨蛤、そうだ蛤鍋なんてどうですか」

これは画家の、小野佐世男の科白として。小野佐世男が蛤をたくさん持って、やはり画家の、池部 均のところにやって来たので。
これに対する池部 均の言葉。

「………焼き豆腐、京菜、葱なんかを入れていた。いかにも東京の下町の鍋ものだ。」

余談ではありますが。池部 良と、岡本太郎とは、従兄の関係。池部 良のお母さんが、岡本一平の妹ですから。

池部 良が書いた小説に、『氷河を渡る記憶』があります。これは映画の撮影で、アンカレッジの近く、「ポーテージ」に行く話になっています。

「………ポーテージって寒い処だからと聞き、空港へ行く道にあるデパートで買ったというハイネックの真っ黒なスエーターを着ていた。」

これは「治子」の様子として。
ハイネック・スェーターは、モック・タートルネックに近いのでしょうか。
頸元で二重に折返したのが、タートルネック。折返さない一重が、モック・タートルネック。
ハイネック・スェーターは、ブレイザーなどにも合わせられるものです。
どなたかシルクのハイネック・スェーターを編んで頂けませんでしょうか。

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