マドレーヌは美味しいものですよね。形も、また。貝殻みたいで。
どうしてマドレーヌが、マドレーヌなのか。これにもいろんな話があるみたいですね。
その中のひとつに。ナポレオンの時代に。アヴィスという菓子職人が作ったんだとか。アヴィスは美食家でもあったタレイランの菓子職人だったという。
マドレーヌが出てくる小説といえば。あまりにも有名な、『失われた時を求めて』が。もちろん、プルーストの。
プルーストが『スワン家のほうへ』を書いたのは、1913年のこと。このなかにマドレーヌの話が出てきます。小さなマドレーヌを紅茶に浸して食べた瞬間、少年のころの想い出がよみがえってくるんでしたね。
『スワン家のほうへ』を書いた時プルーストは、長篇のつもりではなかったみたい。それが書きはじめると、だんだん長くなって。結局、『失われた時を求めて』の大長篇になったわけです。
『失われた時を求めて』には、「コンブレー」という架空の地名が出てきます。これが有名になって、今の「イリエ・コンブレー」。小説から生まれた地名なんですね。
1913年に生まれた作家が、クロード・シモン。もちろんフランスの、小説家。クロード・シモンの小説に、『三枚つづきの絵』が。1973年の発表。
「この男のほうは明るい色の背広上下に、チョッキは着ていず、上着のボタンははずして淡いブルーのシャツを前にだしていて、金属のタイピンでネクタイを留めている。」
これは物語中の少年が、映画のフィルムを虫メガネで見ている場面。
シャツにタイを結んで。そこにタイ・ピン挿して。美味しいマドレーヌを食べに行くとしましょうか。