マフは、手の防寒具のことですよね。
muff と書いて「マフ」と訓みます。
十九世紀までのヨオロッパでは、ごく一般的な装飾品だったものです。
もっとも上流階級の紳士淑女にふさわしい防寒具だったのでが。
手を温めておくための装身具。
ちょっとした枕くらいの大きさ。この枕の内側に両手を入れて、保温としたのであります。
たいていは毛皮のマフが多かったものですね。
十九世紀以降は主に貴婦人用という印象になったものです。
それ以前には、男も女もマフを使ったもの。
英語の「マフ」は、オランダ語の「モフ」mof から来ているとのこと。「モフ」の意味は「防寒用手袋」であったという。
マフが出てくる日記に、『サミュエル・ピープスの日記』があります。
「今日はじめてマフを使った。妻の去年のマフのお下がりだ。妻には新しいものを買ってやったから、わたしにはこれで十分なのだ。」
1662年11月30日の『日記』に、そのように書いてあります。
少なくとも1662年の英国で、マフを使うのが、当たり前だったことが、窺えるでしょう。
マフが出てくる長篇に、『アンナ・カレーニナ』があります。
1877年に、トルストイが発表した物語。何度も映画化されてもいる名作。
「彼女は黒い手袋をはめた小さい手で、マフについた霜の花を払い落としながら言った。」
これは「キティ」の様子として。
手袋を嵌めた上に、さらにマフを使っているんですね。これなら温かいこと間違いなしでしょう。
また、『アンナ・カレーニナ』にはこんな描写も出てきます。
「灰色の帽子に灰色の外套といういでたちでこちらに向かってやって来る、馴染の深いレーウインの姿を見て狂喜した。」
これはダーリアから眺めてのレーウインの姿として。
ここでの「外套」はマントオmanteau のことではないでしょうか。
フランス語の「マントオ」には、「外套」の意味がありますから。
どなたかフランス式のマントオを仕立てて頂けませんでしょうか。