恋とは素晴らしいものですよね。恋は誰の心のなかにも訪れる元気の薬です。
恋は偉い人の心にも。立派な学者の心にも。
1894年ころの話なんですが。アメリカのシカゴ大学の研究者の心に、恋がやって来たことがあります。でも、それは道ならぬ恋。シカゴ大学学長は、その研究者を呼んで心を改めるよう、注意した。
そんなこともあって彼は後に、西海岸のスタンフォード大学に移っています。1906年のことです。
「彼」とは、ソースティン・ヴェブレン。今では古典となっている『有閑階級の理論』の著者です。『有閑階級の理論』はヴェブレンがシカゴ大学にいた頃の、1899年に刊行されています。少しでもファッションに興味があるなら、一度は目を通したことのあら名著。
「エナメル革の靴、真っ白な下着、光沢のある円筒形の帽子、ステッキなど ( 中略 ) 人間の役に立つ職業で腕を振るうことができない……」。
つまり、シルク・ハットは労働にふさわしくないから美となる、と言っているわけですね。
1899年に生まれたのが、ナボコフ。ウラジミール・ナボコフ。ロシア、ペテルブルクで。貴族の子として。
ナボコフが、1957年に発表した小説が、『プニン』。この中に。
「片手をフランネルのズボンのポケットにつっこみ、絹地上衣をやや伊達男流にひらいてフランネルのチョッキをのぞかせ、颯爽とした様子のシャトーが……」。
これは主人公、プニンの友人で、教授の、シャトーの着こなし。
フラノのヴェストもいいですね。なにかフラノの服で、恋を探しに行くとしましょうか。