パスポートは、旅券のことですよね。「パスポート」passport は読んで字のごとく、「港」を「通る」に不可欠なものです。
パスポートは日本では内閣総理大臣によって発行されます。
「某は、日本国民であり、よってよろしくおとりはからいください」といった内容の、国際身分証でもあります。
パスポートを作った人がいます。こんな風に言いはじめれば、たぶん眉に唾をつけはじめることでしょう。でも、これはうそ偽りないほんとうの話なのです。
時は1946年10月。場所は英国、ロンドンで。当時、多くの難民が出国出来ずに困っていた。そこで特別に難民のための旅券が出されることに。
その特別旅券は、三十二ページの説明の書かれたものだったのです。その三十二ページの文章を書いたのが、コーエン。作家のアルベール・コーエン。そのために人びとはそれを、「コーエン・パスポート」と呼んだという。アルベール・コーエン自身は後にこのように語っています。
「私が書いた一番すばらしい本。『選ばれた女』よりもこのパスポートを誇りに思っている。」
『選ばれた女』は、アルベール・コーエンの代表作。長篇。この中に。
「なあ、ヴェルメーレン、俺のこの腕時計をちょっと見てみろよ、パテック・フィリップだ。スイス一のブランドだよ。」
ここからえんえんと、パテック・フィリップの話がはじまるのですが。
パテック・フィリップは、ノルベール・アントン・ド・パテック伯爵がはじめたので、その名前があります。1839年のこと。もともとは1812年にポーランドに生まれています。
ここに参加したのが時計師の、ジャン・アドリエン・フィリップ。ジャン・フィリップは1842年に、竜頭でゼンマイを巻く機能を発明した人物でもあります。
パスポートを必要とする旅には、パテック・フィリップは自宅に置いておくことをお勧めします。宿の洗面所に置き忘れることもあるでしょうから。