ぶどう酒は、ワインのことですよね。ぶどうから造られた酒なので、ぶどう酒。フランスでヴァン、イタリアでヴィーノ。それを日本では、ぶどう酒。
1625年の古書『太閤記』に、「上戸には、チンタ、ぶだう酒、ろうけ…………………。」と出ています。
「チンタ」は赤ワインのこと。だとするなら「ぶだう酒」は白ワインだったのでしょうか。
いずれにしても十六世紀の昔から、ポルトガル船がぶどう酒を日本に運んできたことは、間違いないようですね。
ぶどう酒がお好きだったのが、山本周五郎。
「若い頃からぼくは特別にブドー酒が好きだった。よくひとから、どうしてそんなにワインを好むのか、という質問をうけるのだが、特にむずかしい理由があるわけではない。その頃たまたま飲みはじめたブドー酒の酔い心地が非常によかったからである。」
山本周五郎著『ブドー酒・哲学・アイスクリーム』の中に、そんな風に書いています。
ぶどう酒が出てくる小説に、『回想のブライズヘッド』があります。1945年に、英国の作家、イーヴリン・ウォーが発表した物語。
「スイバのスープ、白ブドウ酒のソースで煮ただけの平目、さっと焼いた鴨レモンのスフレ。」
なるほど、このメニュウならやはり白ワインでしょうね。『回想のブライズヘッド』には、こんな描写も。
「 ほかのものは皆粗い織りのツイードの服に頑丈なブローグという格好なのに………………。」
この中で、アントニー・ブランシュだけが、スゥエードの靴を履いていたという場面なのですが。
ブローグはもともとスコットランドの労働靴だったもの。「頑丈」なのも、当然でしょう。
さて、頑丈なブローグを履いて、ぶどう酒を飲みに行くといたしましょうか。