ウインザー公は、紳士服飾の20世紀のスタイルやトレンドに大きな影響と功績を残した。それは21世紀の現代でも、燦然と輝き続けている。そんなウインザー公へのオマージュも込めて、選びぬいた情報や製品をセレクトしてお伝えします。
今回は近年注目の「Dandy ダンディ」についてです。
ウィンザー ヘリテイジ独自の視点で選んだ写真集、雑誌などのセレクトや、男子専科が選ぶ「Mr.ダンディ アワード2015」の発表会からも、現代のダンディについて考察しました。
近年、ダンディと言う言葉がイギリスやフランスから、多く聞かれるように。それは、2007年「The New English Dandy」、2014年「I am Dandy」と言う写真集が出版され、さらにフランスでは「DANDY」なる男性雑誌までも登場している。
また、日本では1993年の「アド インフィニタム③(集英社)」のダンディズム研究や、1999年の「ダンディズム 栄光と悲惨(中公文庫)生田耕作」の本あたりが、かなり詳しくダンディを解説している。でも男性の装いの考え方としてはかなり高尚な為、深い意味での認知には至らなかった。
しかし何故、今「ダンデイ」が注目されるのだろうか?
そもそもダンディと言えば一般的には男性が装いに対して事細かく拘る事、古くは18世紀末から19世紀初頭にかけてイギリスで大論争を起こした言葉だ。それは、ある一人の男によってもたらされた。その男とはジョージ ブライアン ブランメル(1778〜1840年)。ブランメルは、今では考えられないような装いや立ち振る舞い方を、時の英国王室のジョージ4世を、皇太子時代からの力を借りて実現したのである。
ブランメルの全盛期は1799〜1814年の約15年間、この間に王侯貴族は彼の装うスタイルや美意識に大きな影響を受けたのだ。
当時ブランメルの代表的な服装例は下記に
●装い全体は極力シンプルなワントーンカラーに抑え、ディテールに最高の素材を採用。
●体型の際立つ優れた仕立てを重視。
●シャツの白さは当時のロンドンでは、水質や大気汚染の影響の為、ロンドン郊外で洗濯させた。(カントリー ウォッシング)
●入浴の徹底、オーデコロンは使わない。
●ブーツはシャンパンで革底まで磨く。
●ネッククロスは結び目の完成度に拘る。
こうした労力をかけた装いでも「人から振り返られるようでは失敗」という事だった。
抑制、排除、引き算、消去、そして限られたディテールへのストイックな拘りこそが、ブランメルの服装の流儀として伝説となった。
この時代が生み出した彼を、Beau ボウ(洒落者) ブランメルと呼び、ダンディの象徴として語られいる。
ところで、現代のダンディについても触れておきたい。それは永らく休刊していた日本を代表する歴史的な男性誌「男子専科=ダンセン」が遂に復刊を果たし、 先日の4月10日には同誌の編集部が選ぶ「Mr.ダンディ アワード2015」の発表会が開催された。
見事にアワードに輝いたのは、写真中央の西原英司さん(リンクス モードアドバイザー)。
とかく日本でのダンディの解釈は、我こそはお洒落、と言わんばかりの自惚れ男、或いは自意識過剰なファッション志向の人物と思われがちだが、アワード獲得の西原英司さんは、それらとは全く異なる上品で知的な完璧なウェル ドレッサーだった。
近年のラグジュアリーブランドの盛り上がりや、スーツ選びの間違ったマニュアル化は、勘違いのオシャレ男を生み出してきたが、本来の正統派スタイルへの回帰願望も一方では強く作用し、ダンディとも結びついたのだろうか。
僭越ながら現代の日本でのダンディ考察は、ダンディズムの考え方として「正統派服装の美意識至上主義」とでも解釈したい。そして「粋」を尊び、「控えめ」を心に、「嗜み」を重視でお願いしたいものだ
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