ピーコックは、孔雀のことですよね。昔、1960年代に、「ピーコック革命」というのがありました。孔雀の雄を見倣って、男たちよ美しく装え、という提唱だったのですが。
十八世紀の英国王に、ジョージ三世がおりましてね。このお方の口癖が、「ピーコック」。言葉の一段落ごとに、「ピーコック」。
困った側近がジョージ三世に申し上げた。
「ピーコックはたしかに締めくくりにはふさわしいものです。しかし、家臣の耳には届かない方が、もっと効果的でございましょう。」
ジョージ三世はこの忠告以来、「ピーコック」を口の中で言うようになって、万事解決したという話があります。
「一方、飾棚には、繊細なガラス細工の孔雀がある。」
昭和四十年に、三島由起夫が発表した短篇に、『孔雀』があります。主人公の「富岡」は、孔雀の置物が趣味という設定になっているのですが。
「カシミヤの薄茶のカーディガンを引つかけて、椅子に深く身を沈めた姿に、落着きとゆとりが見える。」
もちろん「富岡」の着こなしとして。
ピーコックが出てくるミステリに、『国会議事堂の死体』があります。英国の作家、スタンリー・ハイランドが、1958年に発表した物語。
「いや、違うのです。仕事ならあります。」とピーコックがおずおずと言った。
クリストファー・ピーコックは、国会の委員長書記という設定になっています。
また、『国会議事堂の死体』には、こんな描写も出てきます。
「………ブーツには一流のボックス革、上質のリネンのシャツ、素晴らしいビーヴァー帽………」
これはとある紳士が身に着けていた服装について。
ここでの「ビーヴァー帽」は、どのように理解したら良いのでしょうか。
勝手な想像ではありますが。ビーヴァーのヘアを使ってのフェルト製ではなかったか。
余談ですが。ロンドン、ボンド・ストリートの帽子店「ロチェスター」の品物だったそうですが。
どなたかビーヴァー・フェルトのソフト・ハットを作って頂けませんでしょうか。