宗助とソックス

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宗助は、男の人の名前ですよね。宗助で、小説の主人公でといえば、『門』を想うお方もいらっしゃるでしょう。
小説の『門』は、明治四十三年に夏目漱石が発表した物語。
この『門』の題名は、森田草平と、小宮豊隆が相談して決めたものなんだそうですね。
編集者は、連載小説の場合、「予告」の必要があります。そんなわけで原稿よりも先に「お題」を知りたがるものです。
でも、『門』の場合、漱石にまだ案が浮かんでいなくて。そこで急遽、『門』に。
漱石自身は、新聞の予告を見て、はじめて新しい小説の題が『門』だと知ったと、伝えられています。

「宗助は仕立て卸しの紡績織の脊中へ………」

漱石の『門』は、生地の名前がたくさん出てくる物語でもあります。
「紡績織」。これも明治語のひとつでしょう。手織に対して機械織の生地を広く「紡績織」と呼んだんだそうです。

「鶉御召だの、高貴織だの、清涼織だの………」

これは宗助が呉服屋を眺めている場面として。
「高貴織」は、やや光沢のある生地のこと。緯糸に撚りをかけて織るので、光沢があらわれるのです。これまた、明治語というべきでしょう。

「あの高貴の着物はニヤけて居て俺は嫌いだから………」

大正十五年に、川崎長太郎が発表した『兄の立場』に、そのような会話が出てきます。お母さんに「高貴の着物はどうしたの?」と問われた兄の返事として。
えーと、『門』に戻りましょう。『門』を読んでおりますと、宗助が雨で靴下を濡らすところが出てきます。

「御米はその晩夫の為に置炬燵へ火を入れて、スコッチの靴下と縞羅紗の洋袴を乾かした。」

御米が宗助の奥さんであるのは、言うまでもないでしょう。ここでの「スコッチ」が、トゥイードであるのは、もちろんのことです。
宗助はスコットランドの紡毛のソックスを履いていたんですね。
どなたかトゥイードのソックスを編んで頂けませんでしょうか。

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