エデンは、楽園のことですよね。もちろん、「エデンの園」であります。古代、メソポタミアの、チグリス・ユーフラテス河の近くにあっただろうと、考えられています。
エデンの園は旧約聖書の物語。アダムとイヴが幸せに暮していた場所のことですね。Eden 。これは人の名前では、「イーデン」とも訓めます。
たとえば英国の政治家だった、アントニー・イーデンだとか。このアントニー・イーデンが流行らせた帽子に、「イーデン・ハット」があります。いつも濃紺の三揃いスーツを着て、やはり濃紺のホンブルグ・ハットをかぶっていたので。
このために、「イーデン・ハット」の名前が生まれたのです。
アメリカ映画で、エデンとくれば、『エデンの東』でしょうか。1955年のアメリカ映画。原作は、ジョン・スタインベック。映画の監督は、エリア・カザン。主演は、かのジェイムズ・ディーン。主演の「キャル」を演じています。
妙な言い方ですが。ジェイムズ・ディーンは珍しく「演技」をしなかった映画俳優だと思います。演技が必要でなかった役者。
『エデンの東』の「キャル」は、ディーンそのものだったから。
これは『理由なき反抗』の、「ジム」についても同じことが言えるでしょう。また、『ジャイアンツ』の、「ジェット」についても。つまり、役柄そのものが、ジェイムズ・ディーンだったので。
『エデンの東』は、旧約聖書を下敷きにしているので、その題名になっています。
1952年の発表。作者、スタインベックとしても、自信作だったようですね。
「どんな作家にも生涯これ一作という本があり、自分にとっては『エデンの東』がそれだ」
そんな意味の発言をしているほどです。
エデンが出てくる小説に、『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』があります。ゲエテが、1911年に発表した長篇。
「涼しい夕ぐれにエデンの園を散策される造物主を遠くから予感させてくれるのでした。」
また、『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』には、こんな描写も出てきます。
「肘にいくつものつぎをあてた古びた上衣を着た、やせた男が進み出た。」
これは伯爵がある俳優を呼びよせた場面。
その上着には、エルボー・パッチがあしらわれていたのでしょう。
エルボー・パッチ付きのカントリー・ジャケットはなぜ、男の興味を惹くのか。
その上着を大切に着ている印として。いや、この上着だけは大切にしたいほどの逸品だから。
エルボー・パッチには、そんな想いが籠もっているのです。