木の芽と絹モスリン

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木の芽は、山椒の若芽のことですよね。「山椒は小粒でぴりりと辛い」などというではありませんか。和風のハーブであります。
木の芽和えは、ご存じでしょう。味噌などに、ほんの少し山椒の若芽を刻んで、魚を焼いたりする料理のことですよね。
もっとも一般的なところでは、木の芽田楽。豆腐に木の芽味噌を塗りまして、これを焼いてから頂く一品であります。

「京阪にては山椒の若芽をみそに摺り入る。江戸は摺り入れず上に置くなり。各木の芽田楽と云ふ。

喜田川守貞の『近世風俗志』に、そのように出ています。木の芽田楽は、江戸期から好まれていたのでしょう。

木の芽田楽が出てくる随筆に、『もめん随筆』があります。昭和十一年に、森田たまが発表したものです。この『もめん随筆』が拍手喝采となったので、以降、多くの続編が出版されています。

「木の芽といへばむかしは東京の町なかで、思ひがけない横丁に木の芽田楽と染めぬいた赤い旗の出てゐる事があつた。」

森田たまは、『もめん随筆』の中に、そのように書いています。戦前の東京でも、木の芽田楽屋があったのでしょうね。
同じ『もめん随筆』の中に、着物の話も出てきます。

「一ト夏上海にゐた妹から、ふらんすの婦人服地だと云ふ白地にラヴェンダ色の細かい縞のはいつたもすりんを贈られて、気まぐれに仕立ててみると」

森田たまは『絹もすりん』の章題で、そんなことを書いています。
モスリンは多く、木綿です。が、モスリンは織り方の名前でもあって、当然、絹でモスリンふうに織ることもできます。シルク・モスリン。
男の場合でも、今、シルク・モスリンのシャツがあったら、ぜひ着てみたいものですね。

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