ロール・ネックは、タートル・ネックのことですよね。イギリス英語では、「ロール・ネック」。アメリカ英語では、「タートル・ネック」。日本語なら、「とっくり首」でしょうか。
徳利の形に似ているので、「とっくり首」なのでしょうね。徳利はつまり銚子のことであります。所が変れば呼名も変るのでしょう。
イギリス英語では頸のところで巻いてある形なので、「ロール・ネック」と表現するわけですね。アメリカでは、それを着た印象が亀の首に似ているので、「タートル・ネック」となるのでしょう。
ロール・ネックは多少の手入れが必要です。長く着ていると、頸の折癖がついてしまうので。ウールに適温のアイロンで、スチームをかけると、折癖が消えます。つまり、ふたたび頸にぴったりとフィットしてくれるようになるのです。
ロール・ネックが出てくるミステリに、『危険なささやき』があります。1976年に、フランスの作家、J・P・マンシェットが発表した物語。
「グレーのフランネルでできた太いズボンに、包装紙のような色のタートルネックのセーター。」
これは自宅で寛いでいる「エマン」という男の着こなしについて。それを眺めているのが、私立探偵のウージェーヌ・タルボンという設定になっています。
私立探偵のタルボンはどんな車に乗っているのか。「シトロエン2cv」。1970年代の巴里ではまだ現役だったのでしょう。
「シトロエン2cv」は、経済的な自動車。また、使い道の広い車でもありましたね。たとえば、座席が簡単に
取り外せたり。
黒澤
明監督の映画『どれすかでん』にも、シトロエン2cvが出てきます。主人公「六ちゃん」の家は、シトロエン2cvなんですから。人が住める家。いいですねえ。
『危険なささやき』には、こんな描写も出てきます。
「絹のスリーピースの上にローデン織りのコートを着ていた。」
これは「シャルル・ブラディエ」という男の着こなしとして。1970年代の巴里では、ローデンがずいぶんと流行ったものです。
いわゆるローデン・グリーンと呼ばれるくすんだ色合いの緑が多かった記憶があります。もともとはティロル地方で織られていた極厚のウール地が素材だったので、「ローデン」と呼ばれたものです。
全体のシルエットはゆったりとしたAラインが特徴のものでした。多少の雨なら弾いてくれるのも、ローデンの強さだったものです。
どなたか1970年代のローデンを復刻させて頂けませんでしょうか。