アランとアルパカ

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アランは、人の名前にもありますよね。
たとえば、エドガー・アラン・ポオだとか。エドガー・アラン・ポオは、十九世紀の偉大なる作家であります。小説としての代表作は、『アッシャー家の崩壊』でしょうか
エドガー・アラン・ポオはまた『モルグ街の殺人』の作者でもあります。
『モルグ街の殺人』は1841年『グレアムズ・マガジン4月号に発表された小説。この『モルグ街の殺人』こそ世界最初の探偵小説だと考えられています。
では、なぜ、ポオは探偵小説を書いたのか。『グレアムズ・マガジン』の発行部数を伸ばすためにポオは『グレアムズ・マガジン』の編集者でもありましたから。
探偵小説はまた、謎解き小説でもあって、必ず読者は興味を持ってくれるだろうと考えてのことであったのです。まさに必要は発明の母であります。
エドガー・アラン・ポオは、作家であり、編集者であり、また優れた詩人でもありました。ポオの詩の代表作が、『大鴉』なのです。
1845年の発表。この時原稿料、九ドルだったと伝えられています。もっとも優れた詩に与えられたもっとも少ない金額であるのかも知れませんね。
『大鴉』は長篇詩。大鴉と青年が会話する内容になっています。ポオは『大鴉』をまるで音楽の美しいメロディーでもあるかのような調べで詠んでいるのです。時代を超えて遺る名詩だとと言えるでしょう。
エドガー・アラン・ポオの人生には、謎も多くあります。そのひとつの謎は、1833年のヴァージニア・クレムとの結婚があるでしょう。
ポオが二十四歳の時。新婦ヴァージニアは、十三歳と一ヵ月。しかもヴァージニアはポオの従妹でもありました。ということはヴァージニアが十二歳の時に求婚しているのでですからね。「少女愛」とでも言えば良いのでしょうか。

1858年には、『大鴉』の英国版が出版されています。この時に挿絵を添えたのが、当時、イギリスで人気のあったジョン・テニエル。
ジョン・テニエルが、『不思議の国のアリス』の挿絵を担当したのは、広く識られているところです。『不思議の国のアリス』の作者、ルイス・キャロルが、知る人ぞ知る「少女愛者」であったのは、言うまでもないでしょう。
アメリカのポオとイギリスのルイス・キャロルとの不思議な接点ではないでしょうか。

エドガー・アラン・ポオが出てくる戯曲に、『欲望という名の電車』があります。
1947年に、テネシー・ウイリアムズが発表した演劇。主演はもちろん、若き日のマーロン・ブランド。演出が、エリア・カザン。これを後に映画化されたのが、『欲望という名の電車』なのですね。

「わたしーポーでなくちゃ、エドガー・アラン・ポーでなくちゃ ー 」

これは「ブランチ」の科白として。「ブランチ」は半ば正気を失いかけている中年女性。夢と幻の間で生きている女性。
女優なら一度は演じてみたい役柄が、「ブランチ」。もし、「ブランチ」が立派に演じられたなら、演技派女優だと言えるに違いありません。
でも、なぜ、ここに「エドガー・アラン・ポー」が出てくるのか。ブランチは暗に、自分はインテリだと言っているのです。インテリ女性を表すのに、テネシー・ウイリアムズはエドガー・アラン・ポオを持ち出したのでしょう。
『欲望という名の電車』にこんな会話も出てきます

「これは非常に薄手のアルパカです。」

これは「ミッチ」が、自分の着ている上着について。ブランチに説明している場面。
ミッチは、ブランチの狂気に気づいていなくて、熱心に想いを寄せる男の役どころなのです。

アルパカalpaca は小動物の毛。アルパカはグアナコに近い動物で、極上の繊維が生まれます。1940年代当時に、夏服地だと考えられていたようですが。
今の時代なら、アルパカはイアラウンドの生地でしょう。
どなたかアルパカのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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