ココアは美味しいものですよね。今の時期なら、アイス・ココアという手もあるかも知れませんが。
ココアでもアイス・ココアでも、今はわりあい簡単に作れるようですし。ココアの元はカカオ。まさに飲むチョコレートと言って良いでしょう。
ココアの出てくるミステリに、『スタイルズ荘の怪事件』が。もちろん、アガサ・クリスティ。というよりもアガサ・クリスティにとって記念すべき第一作目の著書。1920年のこと。初版は二千部。これはすぐに売れたそうです。その時の版権料、25ポンドと記録されています。これが好評なので、第二作『秘密機関』、『ゴルフ場殺人事件』へと続くわけです。
「すると、七時十五分から八時までのあいだ、左棟のテーブルに置いてあったんですね。」
これはポアロの科白。物語の中に「ココア」は何度も出てきます。
ただし原文では「ココア」 coco になっている。アガサは当然、原稿には、cocoa と書いた。でも、出版社の校正係が、coco だとして譲らない。結局 coco で印刷。ちょっとしたミステリであります。もっとも初版だけのことなんでしょうが。
アガサ・クリスティが1934年に発表したのが、『オリエント急行殺人事件』。これは名作で、映画化もされています。また映画化とは別に、『オリエント急行殺人事件』に影響されたパロディー風も出ているほどです。たとえば、河野典生著『アガサ・クリスティ殺人事件』 ( 昭和五十八年刊 ) もそのひとつ。その中に。
「森敏郎はさらに五、六歳年長者だが、黄土色のサファリ・スーツと真紅のシャツが……」
森敏郎は、「Y新聞」の記者という設定。
サファリ・スーツ。いいですね。アイス・ココアを飲みに行くにも、ぴったりでしょう。