トーチカとトレンチ・コオト

トーチカは、特火点のことですよね。
トーチカは防御壕のこと。
身の安全を守るための防ぎ。
ロシア語の「トーチカ」tochka からから来ている言葉。トーチカのもともとの意味は、「点」だったという。

「四人がゝりで彼方此方へ動かして繋ぎ合せたり積み重ねたりして保壘や特火點を作り、空気銃を擬してそれを攻撃する。」

谷崎潤一郎の長篇『細雪』に、そんな一節が出てきます。
これは「シュールツ家」の子供たちの遊びとして。夏休みの、戦争ごっこ。
ここでの「特火點」は、防塁のこと。つまりは、トーチカ。

「山頂には敵の堅固なトーチカがずらりと並び、散兵壕が岩かげに長々と幾重にも掘りまはされて、」

石川達三が、昭和十三年に発表した小説『生きてゐる兵隊』に、そのような文章が出てきます。
これは当時の中国での様子なのですが。
トーチカが出てくる小説に、『深夜プラス1』があります。
英国の作家、ギャヴィン・ライアルが、1965年に発表した名作。
今からざっと六十年以上前の物語ですが。まったく魅力を損なっていないのは、不思議なくらいです。

「二つのトーチカの間に、塹壕の上の橋を通るタンク道があった。」

また、『深夜プラス1』にはこんな描写も出てきます。

「トレンチ・コートに正体を見破られないうちにマガンハルトをメランから引き離さなければならない。」

これは物語の主人公、ルイス・ケインの想いとして。
ルイス・ケインは富豪のマガンハルトを、リヒテンシュタインに無事に送り届ける任務の最中。
『深夜プラス1』は冒険小説ですから、トレンチ・コオトが出てくるのも当然でしょう。
どなたか1965年型の絹のトレンチ・コオトを仕立てて頂けませんでしょうか。