林とケープ

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林という姓はわりあい多いですよね。
たとえば、林芙美子とか。林芙美子の『放浪記』はよく知られているところでしょう。
林という姓の作家で忘れてならないのが、林 不忘。林芙美子より三つほど年上でした。名前の中にちゃんと「忘れずに」にと入っています。
林 不忘の本名は、長谷川海太郎。長谷川海太郎には、谷 譲次の筆名もあって。というよりも「メリケンジャップ物」を書く時のペンネームが、谷 譲次。ユーモア小説を書く時のペンネームが、牧 逸馬。
牧 逸馬、谷 譲次、林 不忘の筆名を使い分けて、書きに書いた。これだけの短い期間に、これだけ多くの小説を書いた作家は、空前絶後と言いたいほどです。
林 不忘の『丹下左膳』も流行りましたね。映画にもなって。大河内伝次郎が、丹下左膳の役。少し独特の発音で。「シエイは丹下、名はシャゼン……」。この名文句が大流行に。
丹下家の家紋は、髑髏というのですから、変わっています。そんな奇想天外なところにも人気があったのでしょう。
牧 逸馬が昭和六年に訳したのが、『バッド・ガール』。原作は、ヴィニア・デルマー。この「バッド・ガール」も、当時、水の江瀧子が使って、大流行。『バッド・ガール』の中に。

「ナイルの水といふ名だけ洒落た緑色裏のついたケイプだが………」

とあります。もちろん、「ケープ」のことでしょう。ケープ cape は軽い、袖無しの、マント。脱いだり着たりが楽な服装でもあります。日本の「合羽」とも関係のある、古典の衣裳なのです。
牧 逸馬訳『バッド・ガール』に出てくる「ケイプ」は、ケープの比較的はやい例かと思われます。

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