散歩は気持よいものですよね。朝の、新鮮な空気をたくさん吸えますし。
散歩にも、いろんなのがあるみたいで、朝の散歩。昼の散歩。夜の散歩。深夜の散歩。
そうそう、『深夜の散歩』という本があります。副題が、「ミステリの愉しみ」。たしかにミステリは深夜に読むことが多い。それは頭の散歩。で、『深夜の散歩』なんでしょう。
『深夜の散歩』は、1964年の刊。ざっと五十年前の本ということになります。福永武彦、中村真一郎、丸谷才一。三人の共著なんですね。なんとまあ、贅沢なこと。お三方とも、読み巧者にして、ミステリ愛好家。
福永武彦は別に、加田怜太郎の筆名があって、ミステリをも書いています。愛読者以上というべきでしょうね。
その福永武彦がミステリのベスト二位に選んだのが、『僧正殺人事件』と、『Yの悲劇』。もちろん前者が、ヴァン・ダイン、後者が、エラリイ・クイーンです。
1929年に発表された『僧正殺人事件』に、ポルトが出てくる。ポルトは酒精強化ワインで、これを飲むと病むことがない、なんて話が出てくるのですが。
『僧正殺人事件』にはまた、弓の名手、J・C・ロビンが出てきます。では、ロビンはどんな恰好なのか。
「明るいグレーのフランネル地の二つ揃いのスポーツ服を着て、薄青色の絹のシャツをつけ、厚いゴム底で、タン色をしたオックスフォード型の靴をはいていた。」
ライト・ブルーのスポーツ・シャツ。いいですね。そしてまた、絹のパジャマは「深夜の散歩」にはぴったりだと思います。