ダイヤモンドとトロピカル

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ダイヤモンドは、憧れの的ですね。もしダイヤモンドを持っていなくても、『ダイヤモンドは永遠に』を読むことはできます。
映画の『ダイヤモンドは永遠に』を観ることも。もちろん主題歌を聴くこともできます。小説自体は、1956年に、イアン・フレミングによって発表されています。
イアン・フレミングの友人に、ヘンリー・ウォールストンという人物がいた。ヘンリー・ウォールストンは、富豪。大のつく富豪。世界各地に邸宅があって。本宅の広さは数千エイカー。ここに働く使用人の数は、ざっと百人いたそうです。
これも英国の作家、イーヴリン・ウォーがある日、ウォールストン家に食事に行こうと。すると、ウォールストン夫人は言った。
「あら、その日は客が150人来るんだけど、いいわね。」
イーヴリン・ウォーは、150人と夕食を囲むことに。この夫人が、キャサリン・ウォールストン。美女にして、富豪にして、大奇人。
ある日のこと。イアン・フレミングとその夫人、アンとが、キャサリンを訪ねた時のこと。キャサリン・ウォールストンは、たまたまイアン・フレミングが持っていたステッキに興味をしめした。その古い、なんでもないステッキが欲しい、と。そこで、アン・フレミングが。
「じゃあ、貴方のドレスと交換すれば………」。
と、キャサリンはドレスを脱ぎはじめて。アンはそれをやめさせるのに、ひと苦労。これは、マイクル・シェルデン著『グレアム・グリーン伝』に出ている話なのですが。グレアム・グリーンは一時期、キャサリンと仲良しだったそうです。
グレアム・グリーンが1958年に書いたのが、『ハバナの男』。これは読んで字のごとく、ハバナを舞台に活躍する、英国人スパイの物語。この中に。

「長身の、黒鼠色のトロピカルの背広に、特別な資格がなければつけられないタイをつけた上品な紳士で…………」。

「トロピカル」は、夏生地。トロピカル・ウーウテッド。昔の英国では主に輸出用とされたものです。
強撚糸を交互に織った生地。その場合、撚りの方向を交互に配する、特殊な織り方。それはともかく、一度は着てみたい生地ですね。

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