ジョンとシルク・ハット

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ジョンという名前は、少なくないですよね。たとえば、ジョン・レノンだとか。たとえば、ジョン・ケージだとか。ジョン・コルトレーンだとか。ジョン・デンバーだとか。
でも、れっきとした日本人で「ジョン」と呼ばれた人がいるんだそうですね。北原白秋。北原白秋は、明治十八年一月二十五日に生まれています。福岡県、山門郡、沖端村で。今の、柳川でありますが。
本名は、北原隆吉。でも、まわりの人は、「トンカ・ジョン」の名前で呼んだものです。もう少し正確には、「油屋のトンカ・ジョン」と。トンカ・ジョンのお父さんは、北原長太郎で、大きな海産物問屋。酒蔵をも持っていた。
「トンカ・ジョン」は、柳河弁で、「良家の長男」の意味だったのです、今は「柳川」と書きますが、白秋が子どもの頃には、「柳河」と書いたんだそうですね。北原白秋自身の説によれば、柳河弁には多くポルトガル語の影響があるんだとか。そしてまた白秋は、好んで柳河弁を織り込んだ詩人でもあります。

そのかげに透く水面こそ
けふもOngoの眼つきすれ。

これは『水面』と題された詩。ただし、「みのも」と訓ませているのですが。この「おんご」もまた、柳河弁。「良家の娘」の意味なんだそうですね。
北原白秋に、『農民美術の歌』というのがあります。

シルクハットの県知事さんが出て見てる天幕の外の遠いアルプス

これは白秋が1920年代に詠んだ短歌。当時の「県知事さん」は、シルク・ハットだったんだそうですね。ということは、フロック・コートか、モーニング。
シルク・ハットは読んで字のごとくシルクを使ってあるから。それ以前の、ビーヴァの毛皮を使ったものは、「トップ・ハット」。
一度は、シルク・ハット、被ってみたいですねえ。

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