ボーヴォワールとヴィオレ

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ボーヴォワールはもちろん、シモーヌ・ドゥ・ボーヴォワールのことですよね。二十世紀、フランスきっての才媛。第一級の知性の持主。サルトルとの親交についてはいうまでもないでしょう。
若き日のボーヴォワールは、ある時、リュクサンブール公園で、サルトルと徹底的に議論。その結果の、ボーヴォワールの結論。
「哲学については、サルトルだけには、叶わない。」
ごく親しい人はボーヴォワールのことを、「 カストール」の愛称で呼んだそうですね。ボーヴォワールを短くすると、「ビーヴァー」に聴こえる。ビーヴァーは「海狸」のことで、海狸はフランス語で、「カストール」になるから。
カストールが、いや、ボーヴォワールがサルトルより優っていたのは、酒。ボーヴォワールはたいへん酒が強かったらしい。

「サルトルから二通目、まだナンシーでぶらぶらしているそう。《パジェス》というこ小さなレストランへ昼食に入って、一〇フランでとてもおいしい食事をし、それからブーブーとコーヒーを飲む………」。

1939年9月7日、木曜日の日記に、ボーヴォワールはそのように書いています。もちろん第二次世界大戦中で、サルトルは戦線へ。ボーヴォワールはひとりでパリに残っていたのです。1939年頃のパリでは、十フランでランチが食べられたんですね。
食事といえば、ボーヴォワールは同じ年の9月5日には、「クーポール」で、「トゥルーズ・エザウ」を食べています。これはレンズ豆添えのソーセージで、サルトルの大好物だったもの。
サルトルが、1938年に発表した小説に、『嘔吐』があります。この中に。

「薄紫色のズボンつりをし、肘の上までワイシャツの袖をまくりあげている。」

これは、アドルフという男の様子。今は、上着を脱いでいるので。まあ、「薄紫色のズボンつり」というのもあるでしょう。が、サルトルはこの「薄紫色」と、ブルーとについて、えんえんと語るのです。そう、「ブルー」はシャツの色なんですね。
少なくともサルトルが紫色に、なみなみならぬ関心を持っていたのは、間違いないでしょう。フランス風にいえば、ヴィオレのブレテル。一度、そんなの、使ってみたいですね。

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