アップダイクとアスコット

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アップダイクというアメリカ人がいますよね。Updike と書きます。ジョン・アップダイク。代表作は、『走れうさぎ』でしょうか。
ジョン・アップダイクは、1932年に、ペンシルヴァニア州、シリングトンに生まれています。お父さんは、ウェズリー、お母さんは、リンダ。ひとりっ子だったそうですね。
1941年に、ジョン・アップダイクは、オックスフォード・ブーツを履いていた。1941年9月21日に。オックスフォード・ブーツが、紐結びの、頑丈なブーツであるのは、言うまでもないでしょう。オックスフォード・ブーツの上には子供用のスーツを着ています。
今、アップダイク著『アップダイクと私』を開いているのですが。これはアップダイク自身をめぐる随筆集。その中の、「ブキッシュな少年」と題する文章なのです。
どうしてジョン少年の靴がオックスフォード・ブーツと分かるのか。写真が添えられているからなのです。

「この写真を撮ったのは母で、裏に一九四一年九月二十一日と正確な日付を残している。」

「ブキッシュな少年」は、この一枚の写真から、まさにアップダイクの世界が拡がってゆくのです。まあ、作家の業というものでしょう。「ブキッシュ」ということも含めて。ジョン少年はその頃から、とにかく本ばかり読んでいたそうですね。
しかし。「どうしてそこまで書くのか」は、謎であります。「そこまで書くのが作家の商売」と、言われるのなら、それまでの話なんですが。

「カメラは古い型の細長いコダックで、石目模様をした黒革のケース、折り畳み式の黒い蛇腹、それにファインダーがひび割れていた。……………」。

「どうしてそこまで書くのか」。「そこまで書くのが作家の商売だから。」
ジョン・アップダイクじ憧れて作家になった人に、リック・ムーディがいます。リック・ムーディ著「アイス・ストーム』を読むと。現代アメリカ人の裏側がかなりの部分、分かります。「そこまで書くか」の精神はたしかに、リック・ムーディに引き継がれています。まあ、それはそれとして。この中に。

「ツイードの上着を着た人間も少しはいたが、アスコットをしている者は皆無だった。」

もちろん、アスコット・スカーフのことでしょう。ハルフォード家のパーティに招かれたベンジャミン・フッドの姿。
ここからフッドは自分が「アスコット」をしてきたことに、えんえんと悩むのですね。「そこまで悩むか」。
人よ、服についた悩むべからず。正しい服はいつも正しいのですからね。

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