小説とシャークスキン

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小説を読むのは、愉しいものですよね。なによりの娯楽、悦楽、快感であります。
小説はまた、フィクションでもあります。要するにすべては「創りもの」なんですね。「創りもの」ですから、すべてはいっときの夢物語。なんの苦労も責任もないわけです。

「森の中の赤い館で、モナーク男爵が死体で発見された。」

もしそんな書き出しがあったとしても、実はだれも死んではいないのです。つかの間、物語の中に遊んで、ハラハラドキドキさせてもらえれば、それで良いのですから。
山崎豊子は、大阪に生まれ、大阪に暮らした小説家。その山崎豊子に『小説ほど面白いものはないという本があります。これは、ノンフィクション。
『小説ほど面白いものはない』の中で、もっとも面白いのが、今 東光との対談。山崎豊子は今 東光との対談の中で、こんな発言をしています。

「ある奥さんがいつも紺の結城を着ているんで、あの人、一枚しか持っていないのかしらんと思ったら、なんと三枚持っているんです。」

大阪のおしゃれ屋さんは、気にいった生地があると、二枚三枚、同じものを仕立てさせるんだとか。
その山崎豊子に、『女の勲章』という小説があります。山崎豊子は『女の勲章』を書くのに、一日六時間調べ、四時間執筆に宛てたという。

「変り織り木綿から、絹ジョーゼット、シャーク・スキン…………」。

『女の勲章』は、ある洋裁学校が背景ですから、生地が出てくるのも、当然でしょう。
「シャーク・スキン」はおそらく、シャークスキン sharkskin のことなのでしょう。生地の表面が、「鮫の皮」を想わせるところから、その名前があります。より立体感を感じさせる生地でもあります。
もちろんウールでのシャークスキンもあります。女性用のみならず、男性用にも多く用いられます。どちらかといえば、サマー・スーツにふさわしいものと、考えられているのですが。
小説家にも、ぜひシャークスキンのスーツをお勧めしたいものです。

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