シトロエンは、フランスの自動車会社ですよね。むかしシトロエンには、「2CV」という名車がありました。
シトロエン2CVは、1948年に発表された小型車。「2CV」の名前は、もともとニ馬力のエンジンを予定していたからなんだそうですね。「もともと」といえば、2CVの試作車は、ヘッドライトがひとつだったという。
とにかくユニイクこの上ない発想の自動車で。1948年にはじめて「2CV」を見たアメリカの自動車評論家は、こう言ったそうです。
「もしこれが車というなら、ぜひカン切りを付けてもらいたい」。
水冷エンジンで、構造は簡単至極。座席は薄く、ゴムの力で弾力をつけていて。なおかつ必要とあれば、外して、車の外に持ち出すことも。郊外にピクニックしたなら、2CVの椅子が使えたわけですね。
シトロエン2CVを愛用したのが、若き日のイヴ・サンローラン。相棒ピエール・ベルジュはロールス・ロイスに乗っているのに、サンローランは2CV。
サンローランの2CVは、外観は標準そのもので。ただし、その内装はすべてサンローラン好みの花柄で統一されていたという。
現代のシトロエンが出てくるミステリに、『甦ったスパイ』があります。チャールズ・カミングが、2012年に発表した物語。
「ケルはニースの空港へ向かっていた。シトロエンをハーツの営業所に戻す。」
トーマス・ケルは、『甦ったスパイ』の主人公。元SIS部員という設定。余計なことではありますが。「ハーツ」は世界のどこにでもあるレンタカー会社。でも、場所がニースなら、「エルツ」と呼ぶのかも知れませんが。
『甦ったスパイ』には、こんな描写もあります。
「青のデッキシューズ、デニムのジーンズという格好でカフェから出てきた。」
これは通称「カッコー」と呼ばれる男の着こなし。
「デニムのジーンズ」。これは実に正しい表現です。デニム denimも、ジーン jeanももちろん生地の名前。
デニムはふつう、経糸に色糸、緯糸に晒し糸を配して、織る。ですから「裏白」になるわけです。
ところが「ジーン」は多く、経緯ともに同じ色の糸を配する。つまり「裏白」にはなりません。
でも、今、私たちは、明らかにデニムで縫われたパンツを「ジーンズ」と呼んでいるわけですね。もちろんこれにも長く、入り組んだ歴史があってのことなのですが。
それはともかく、「デニムのジーンズ」は、かなり正確言いまわしであるのは、間違いありません。