スパイの経験を持つ作家に、モオムがいますよね。もちろん、第一次大戦中のことなんですが。フランスに生まれた英国人作家、サマセット・モオムのことに他なりません。
サマセット・モオムが、どんなスパイだったのか。それは、小説『アシェンデン』に詳しく書かれています。『アシェンデン』は、1928年の刊行。ただしその時代背景は、1910年代におかれています。
サマセット・モオムは一例で、英国の作家でスパイの経験のある人は、珍しいことではありません。たとえば、ジョン・ル・カレ。ジョン・ル・カレは、小説を書く時のペンネーム。本名は、デイヴィッド・ジョン・ムア・コーンウエル。れっきとしたイギリス人で、1950年代にはいわゆる「MI 6」の一員だったという。
ジョン・ル・カレはスパイ小説の名手。これはまあ、当然のことでもあるでしょう。どこまでが真相で、どこからが創作なのか。それもまた、「ジョン・ル・カレ物語」を読む時の愉しみでもありましょう。
ジョン・ル・カレの著書に、『地下道の鳩』があります。『地下道の鳩』は小説ではなくて、「回想録」なのです。この中に。
「私が黒いコートとストライプのズボンという恰好で………………」。
これは1963年頃の、ジョン・ル・カレの服装。『地下道の鳩』には、何度か「黒いコートとストライプのズボン…………」が出てきます。
たぶんイギリス人が、「ヴェストン・ノアール」と呼ぶ服のことでしょう。黒い上着と縞ズボンの組合せ。
時には、「ヴェストン・ノアール」で、スパイ気分を味わってみましょうか。