ラ・フランスは、西洋梨なんでしょうね。まず第一に、形が面白い。真横から見ると、おむすびみたいで。口に入れた時の舌触りも独特で。仄かな甘味があとを引く。
ラ・フランスが日本に入って来たのは、明治三十六年のこととか。でも、それからすぐに拡がったわけでもないようですが。
もともとはフランスの、クロード・ブランシュという人物が発見、で、今もフランスでは、「クロード・ブランシュ」の名前で呼ばれるんだそうですね。
ラ・フランスが出てくる小説に、『ミルク』が。大道珠貴が、2004年に発表した物語。『ミルク』は短篇集の総題。中に、「野菜ジュース、「マシュマロを焼く」、「回転キャンディー」……。食べ物を題名に、ちょっと遣る瀬ない小説集。
「台所には、ラ・フランス、オレンジ、アボカド、黄色のピーマン、レタスが……」
これは「キリ」という女性の実家の様子。彼女のお母さんは、果物好き。「キリ」は、自分の部屋に帰って、ひとり魚を焼いて、ビールを飲む。そうかと思えば、『日の丸弁当』というのもあって。この物語には、「タイジ」という彼が出てきて、いつも日の丸弁当。
日の丸弁当のはじまりは、広島のある女学校からなんだとか。贅沢は敵だ、というのではじめたらしい。これが日本全国に広がるのが、1939年のこと。
1939年からはじまる物語に、『死もまた我等なり』。ジェフリー・アーチャーが、2012年度に発表した小説。
「ミスター・ジェイクスはダーク・ブルーのピンストライプ柄のスーツをまとい、白いワイシャツに縞柄のネクタイを締めていて……」
セフトン・ジェイクスは、NYきっての敏腕弁護士という設定。
なにかダブルのスーツを着て。美味しいラ・フランスを食べた気分になってきましたね。