オーデコロンは、フランシスの「オー・ド・コローニュ」から来ているのでしょうね。つまり、「ケルンの水」というわけです。
よく知られたオー・ド・コローニュに、「4711」があります。かのナポレオン・ボナパルトが、ドイツ、ケルンを占領した時、それぞれの家ごとに番号をつけるように命じた。1、2、3…………。その4711番だったのが、銀行家でもあったミューレンスの家。その時代の兵士のことですから乱暴で、サーベルで数字を書いて、丸で囲んだ。ミューレンスの家では銀行とは別に、香料をも売り出していた。そこから「4711」が今なお用いられているわけです。ナポレオン・ボナパルトもまた「4711」の愛用者で、むしろ薬用飲料水として使ったという。
1929年頃の巴里で生まれた香水に、『ジョイ』 Joy があります。もちろん英語で、「歓喜」の意味になります。
ある時、ジャン・パトウは調香師を呼んで言った。
「最高の香水を創ってもらいたい。」
ジャスミンとローズをふんだんに使ってもらいたい、と。調香師の名前は、「アルネラス」だったと伝えられています。それは結果として、世界一高価な香水になった。『ジョイ』は最初、アメリカで人気に。たぶん名前が良かったのでしょう。
ジョイが出てくるミステリに、『煙幕』があります。1972年に、ディック・フランシスが発表した物語。
「メラニイの香水はジョイのような微妙なかおりで……………」。
また、『煙幕』には、こんな描写も出てきます。
「ダニロが、四時に、真っ赤なオープン・ネックのシャツを着、日焼けした顔に笑みをうかべて……………」。
「オープン・ネックのシャツ」は、開襟シャツのことでしょうか。
開襟シャツで、ジョイの似合う女性を探すのは、難しいかも知れませんが…………。