タペストリーとダブレット

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タペストリーは、綴織のことですね。よく立派な館の壁に、景色などを織りだした厚い布が掛かっています。あれが、タペストリー。
タペストリー tapestry 。フランスでは「タピスリ」 tapisserie 。というよりもフランス語のタピスリから英語の「タペストリー」が生まれたものと思われます。
タペストリーは、古代エジプトの時代にすでにあったというから、古い。その時代には、ウールを使っての平織が基本だったそうです。その後、シルクのタペストリーも始めまっています。ふつう織物は、縦糸と緯糸の間に隙間が生まれる。これを、「ゴット」と言います。が、タペストリーでは、「ドウヴ・テイル」という手法を用いて、この間隙を、消す。ために、よりいっそうの立体感が生まれるわけです。
よく、「ゴブラン織り」ということが言われます。あのゴブラン織りもまた、タペストリーの一種。1440年頃、巴里郊外に住んでいた染色師、ジャン・ゴブランがまことに巧みだったのだった、国が保護した。そのために「ゴブラン織り」とした有名になったものです。
タペストリーの有利だったのは、壁から外して丸めれば、持ち運びが可能だったこと。つまり旅にも持って行くことができた。目的地に着いて、再び壁に掛けて、目を愉しませ、風をも防いでくれた。
そんなわけで、タペストリーは今日の壁紙の起源とも言われているわけですね。タペストリーが出てくる小説に、『古書奇譚』があります。2013年に、チャーリー・ラヴェットが発表した物語。

「青と銀の豪華なタペストリーが肩から床に垂れ、同じ色のリボンが巧みに髪に編みこまれている。」

これは、アマンダ・バイアリイーの衣裳。『古書奇譚』は、シェイクスピアの稀覯本を巡って、中世から現代までを旅する内容になっています。そんなわけで、こんな描写も出てきます。

「《ジョージと竜》亭の扉を勢いよく開けて店に入ると、新調のダブレットから街道の埃をはらつた。」

これは、バーソロミュー・ハーボトルの仕種。ただし、背景は1592年の倫敦なのですが。
ダブレット doublet はその時代のスーツみたいなもの。着丈の短い、装飾的なジャケット。本来は鎧下に、保護のために重ねた服で、後に上着として着られるようになったもの。
いっそ、タペストリーで、ダブレットを仕立ててもらいたいものですが。

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