シャンパンは、粋な飲物ですよね。たとえば、映画『カサブランカ』でのシャンパンとか。
まったく偶然に、むかしの恋人に会う。もちろんそれを演じるのが、イングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガート。で、シャンパンで乾杯。この時のあまりにも有名な科白が、「君の瞳に乾杯」なんですね。
ところで『カサブランカ』でのシャンパンは正しくは、「シャンパン・カクテル」なんだそうです。
「シャンパン・カクテル」は、あらかじめシャンパン・グラスの中に、角砂糖を入れておいて、その上からシャンパンを注ぐ。そして飲む前に、アンゴスチュラ・ビターを一滴垂らして、完成。
シャンパン・カクテルはひとつの例で、シャンパンを使ってのカクテルもいくつかあるようです。美しい名前の、「ブラック・ヴェルヴェット」をはじめとして。ブラック・ヴェルヴェットは、シャンパンと黒ビールとを半々に注いだ、カクテル。名前も色も、美しい。美しいといえば、「ミモザ」も。
ちょっと変わったところでは、「フレンチ 75」があります。フレンチ 75は、シャンパンとジンとのカクテル。爽やかであり、強烈であり。
ところで、どうして「フレンチ 75」の名前なのか。これは第一次大戦と関係があります。第一次大戦中、フランス軍は75ミリ口径の大砲を導入。この大砲の威力、まことに「強烈」だったので、「フレンチ 75」になったという。
シャンパンが出てくる短篇に、『無秩序と幼い悩み』があります。トオマス・マンが、1925年に発表した物語。
「自家用車を持ち、友人たちにシャンパン付きの晩餐を振舞うのだ。」
『無秩序と幼い悩み』には、こんな描写も出てきます。
「ワイシャツに真珠のボタンをつけている…………。」
これは歯科医の息子の着こなし。「真珠のボタン」。たぶん、スタッドなのでしょう。ということは、昼間の服装をしているものと思われます。
一度、真珠のスタッドを飾って、シャンパンを飲んでみたいものですね。