ベッドは、寝台のことですよね。今のようにベッドが普及したのは戦後のことで、それまでの日本では、畳に蒲団ということが多かったようです。
蒲団は蒲団でまた贅沢があって、たとえば「絹蒲団」。絹で拵えた蒲団は、極上品でありました。それも、何枚も重ねたりして。
蒲団がいいのかベッドがいいのか。これはもう好みの問題でしょうね。でも、たまに日本式の宿に泊まって、畳の匂いの中で、真綿に包まれるのも、佳いものであります。
西洋のベッドの歴史も古いんだそうですね。少なくとも古代エジプトにはベッドがあったという。有名なツタンカーメンの墓からも多くのベッドが出土しています。若きツタンカーメン王も、やはりベッドでお休みになったのでしょう。
ところで、ベッドで寝る時の枕はどうだったのか。枕というよりもむしろ「ヘッド・レスト」と呼ぶにふさわしい、木の台を使ったらしい。湾曲した台があって、その上に頭を乗せて、寝た。
まあ、人間のすることですから、いつの時代にも大きな違いはなかったのでしょう。古い時代の日本にも、「箱枕」があって。むかしは皆、髷でありますから、この髷をつぶさないように、箱枕。おしゃれのためには多少の窮屈は致し方のないことなのでしょうね。
「ベッドで飲む一杯のカフェ・オーレ」。これぞ人生最高の幸せというのが、フランス。これがイギリスに行きますと。「ベッドで飲む一杯のミルク・ティー」となるわけですが。
ベッドが出てくる小説に、『曇つた硝子』があります。森 茉莉が昭和三十年に発表した物語。
「さうして二人の女は寝台の上で向ひ合ひ……………」。
森 茉莉は「寝台」の横に「ベッド」とルビを振っています。
森 茉莉が昭和三十六年に書いた小説が、『ボッチチェリの扉』。この中に。
「金鎖にカメオのペンダント。」
と、出てきます。カメオでなくていいのですが。金ペンダントには憧れます。ペンダントを下げて、ベッドに寝るのは気障でしょうか。