ジン・フィズとシルク・シャツ

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ジン・フィズは、口当りにいい飲物ですよね。ジンにレモン・ジュースを加えて、ソーダで割ると、ジン・フィズのできあがり。
このジン・フィズがあまりに有名になったので、いくつかのお友達もできたらしい。たとえば、「シルヴァー・フィズ」。これはレモンの代りに、卵の卵白を使ったもの。また、「ゴールデン・フィズ」も。ゴールデン・フィズは、卵の卵黄を使ったカクテル。
あるいはジン・フィズにミントの葉をあしらうと、「アラバマ・フィズ」という名前になるんだそうですね。
昭和九年に、ジン・フィズを飲んだお方に、古川ロッパがいます。ということは、日本でも明治の頃からジン・フィズは知られていたのでしょうね。

「 「金色」 熱演し、ハネ後、タイヨーのジンフィズを飲みつつ、少々稽古を見る。」

昭和九年五月二十八日。月曜日の日記に、そのように書いています。この日、古川ロッパは、仕事の前に、銀座「教文館」に寄っています。仕事はたぶん「金色夜叉」だったのでしょう。
昼に、「チャシュウワンタン」を召しあがっています。その後、「オコワ」を食べ、「クヅモチ」をも。さすがは、健啖家であります。
ジン・フィズが出てくる小説に、『自由への道』があります。もちろん、サルトル。サルトルが1945年頃に発表した物語。

「 「ジンフィーズ」と、ダニエルが云った。」

これはパリの、「シャンピオーネ」というバアでのこと。ダニエルはボーイに、「上等のウイスキー」を当然のように勧められたので、あえて逆らって、「ジンフィーズ」と言った場面。「ダニエル」は若き日のサルトル自身も投影されているようにも思うのですが。『自由への道』には、こんな描写も。

「彼はクリーム色の絹のワイシャツに腕をとおし、灰色のフラノのズボンをはいた。」

もちろんこれも、ダニエルの様子。「クリーム色の絹の」。たしかに、わずかに黄みがかったシルク・シャツありましたね。
いいなあ、シルク・シャツ。絹のシャツで、ジン・フィズを飲みに行くとしましょうか。

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