サックスとサージ

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サックスは、「サックス・フィフス・アヴェニュウ」のことです。ニューヨーク、五番街にある高級デパート。
でも、ニューヨークに住んでいる場合には、そのすべてを口にする必要はありません。ただ、「サックス」で分ってくれますから。
しかしながら。「あら、私、買物はいつもサックスよ、知らなかった?」とは、言いにくい。それは「直接に」、金がふんだんにあって、趣味がとても佳いのよ、と言っているのに等しいので。
まあ、「サックス・フィフス・アヴェニュウ」はそんな百貨店なのです。ちょっと他の店に較べて気位が高い。
サックスが五番街に店を開いたのが、1923年のこと。アンドリュウ・サックスによって。この時にサックスにお金を出したのが、ギンベル百貨店。
アンドリュウ・サックスは、それ以前には、ヘラルド・スクエアで、メンズ・ショップを開いていた。
アンドリュウ・サックスは、もともとペンシルベニア州の出身で、ニューヨークにやって来たのは、1892年のことだったそうです。アンドリュウの跡を継いだのが、息子の、ホレス・サックス。ホレス・サックスがさらなる高級路線を。
五番街は魔法の街でもあって。突然に、「サックス・フィフス・アヴェニュウ」のような店が生まれてしまうのです。もし、アンドリュウ・サックスがペンシルベニア州にいたなら、今の「サックス・フィフス・アヴェニュウ」は生まれてはいなかったでしょう。
以前は。「今日は五番街を歩いていないから、夜睡れるかしら?」。そんなことをおっしゃるマダムまでいたらしい。おしゃれ好きのマダムには、睡眠薬代りでもあったのでしょう
マダムではありませんが。晩年のマーク・トゥエインまた、ニューヨークに住んでいて。ほとんど毎日のように五番街を散歩。1900年代のこと。
マーク・トゥエインは季節に関係ない、白いサージの服装だった。

以上、すべて常盤新平著『ニューヨーク五番街物語』に出ている話なのです。
常盤新平にこの一冊の本を書かせてしまうくらいには、五番街は魅力ある街なのでしょうね。
一度、白いサージのスーツで、五番街を歩いてみたいものですが。

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