修羅と白麻

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修羅は、阿修羅のことなんだそうですね。阿修羅というのを略して、修羅。
阿修羅は、仏教での守護神のひとりなんだとか。そして帝釈天もまた、守護神。あるとき、阿修羅は帝釈天と闘う。闘うなんて生易しいものではなくて、阿鼻叫喚の極み。壮絶この上もない闘い。その阿修羅が闘った場所なので、修羅場という言葉が生まれたんだそうです。
阿修羅といって、向田邦子を想う人も少なくないでしょう。NHKの人気TVドラマに、『阿修羅のごとく』がありました。1979年のことです。無口な佐分利 信が良かったですよね。第一回の演出が、和田 勉。
『阿修羅のごとく』は後に小説化され、映画化され、舞台にもかけられています。それだけ不朽の名作ということなのでしょう。
『阿修羅のごとく』に似ていなくもないのですが、『修羅』という演劇があります。田中千禾夫の原作。『修羅』の初演は、昭和三十四年、十月。「俳優座」で。演出が、千田是也。舞台装置と衣裳が、伊藤熹朔。伊藤熹朔と千田是也は、兄弟。いちばん上のお兄さんが、伊藤道郎。伊藤道郎は、舞踏の先生。若い頃の伊藤道郎は美男子で。洒落者のひとりとして、忘れてならない人物であります。
まあ、それはともかく。『修羅』のト書きに、こんなふうに出てきます。

「人影の実体が前に出る。御影である。カンカン帽をかぶり、白い麻の洋服に、黒い蝶ネクタイ、白い手袋、白い革靴、そして眼鏡。」

御影 彰の着こなしなんですね。この御影 彰を演じるのが、若き日の、平 幹二朗。平 幹二朗の白麻、さぞかし映えたことでしょうね。
なにか白麻の服を着て、『阿修羅のごとく』の初版本を探しに行くとしましょうか。

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