白葡萄酒は、白ワインのことですよね。ヴァン・ブラン。ヴィーノ・ビヤンコ。ホワイト・ワイン。
ワインは、赤。そんなふうに決めているお方もいます。白ワインもロゼも、赤ワインの敵ではない、と。でもねえ、白ワインにも「すこぶるつきの」極上物があったするものです。
白ワインがお好きだったお方に、芥川龍之介がいます。
「一番うまいと思ふのは白葡萄酒……………………。」
と、答えています。これは、大正十四年の『文章倶楽部』の質問に答えての、解答なんですね。
また、同じような質問に。「好きな夏の料理」というのもあって。
「鯛のうしほ、枝豆も鹽うで、鮑の鹽むし、海老の黄身あへ、鯛の魚田、鴨ロオス………………」。
なんと、ぜんぶ白葡萄酒に合うものばかりではありませんか。
大正のはじめ、芥川龍之介は京都に旅して。何を食べたのか。
「舞扇が光つたりして、甚綺麗だつたから、鴨ロオスを突つきながら、面白いがつて眺めてゐた。」
芥川龍之介著『京都日記』には、そのように出ています。これは、上木屋町のお茶屋での様子。やっぱり「鴨ロオス」なんですね。果たして、白葡萄酒であったかどうか。さあ、それについては出ていませんが。
芥川龍之介が、大正八年に書いた短篇に、『開化の良人』がありますこれは、上野博物館で、本田子爵に会う物語。
「唯一色の黑の中に懶い光を放つてゐる、大きな眞珠のネクタイピンを、子爵その人の心のやうに眺めたと云ふ記憶があつた。」
そんなふうに書いています。うーん。「その人の心のやうな」真珠なんですね。
まあ、戯れに。ワイン・グラスに真珠をいれて、白葡萄酒を飲んでみましょうか。