サンドウイッチとサグリ

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サンドウイッチは、便利なものですよね。いつでも、どこでも、すぐにつくれるから。
とにかく、パンの間になにかを挟めば、たちまちサンドウイッチになってくれるわけですからね。
サンドウイッチは、十八世紀の、英國の海軍大臣でもあった、サンドウイッチ伯爵の名前に因んでいるのは、あまりにも有名な話でしょう。
でも、サンドウイッチ伯爵以前、サンドウイッチらしきものがなかったわけではありません。たとえば、古代エジプトにも、「コレフ」という食べ方があったらしい。やはり、パンの間に何かを挟む食べ方。
つまり、十八世紀の貴族が、なにかをパンの間に挟んで食事代りにするやり方が、新鮮な驚きだったものと思われます。
サンドウイッチは食べ物の名前だけでなく、島の名前でもありました。「サンドウイッチ諸島」。これは今のハワイの、古名。サンドウイッチ伯爵の命により船出したので、「サンドウイッチ諸島」と名づけられたのです。
サンドウイッチがお好きだったお方に、草野心平がいます。草野心平には、『花のサンドイッチ』があります。

フランスパンのひときれを。
トースターからとりだし。
指先で四つに切り。
トラピスト・バターをぬり。
その上にミヤギノハギの紅紫と白萩の白をのつけて食べる。
………………………。

つまり、野草を挟んだサンドウイッチなんでしょう。いかにも草野心平らしいサンドウイッチですね。草野心平はまた、命名の達人でもありまして。
草野心平は、戦後まもなく、焼き鳥屋を開いた時期があったのですが、その時の、店名。「火の車」。うーん、これなら行ってみようという気になりますよね。
むかしのサンドウイッチ諸島が出てくる記録に、『航米日録』があります。玉虫左太夫の筆になるものです。江戸、万延元年の「遣米使節」の貴重な資料です。この中に。

「午後東南サントヰツ島へ向ヒ馳ル。」

玉虫左太夫は、「サントヰツ島」と書いています。そういえば、「サンフランスシコオ」とも。もちろん、サンフランシスコのことなのですが。
玉虫左太夫の『航米日録』を読んでいると。

「腋下或ハ腰辺ニモ二十許ノ囊孔アリテ物ヲ入ル ( 俗ニ云サグリナリ ) 。

ここでは明確に、「サグリ」とあります。もちろん今のポケットのこと。明治期にはポケットのことは、「隠し」。明治語、「隠し」の前には、江戸語としての「サグリ」があったのでしょう。
さて、なにかポケットのある上着を着て、美味しいサンドウイッチを食べに行くとしましょうか。

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