キッパーは、ニシンの燻製ですよね。イギリス式の朝食にはたいてい出てきます。まあ、その意味では日本式朝食の、アジの開きに似ていなくもありません
また、アジの開きと同じように、キッパーの歴史もそうとうに古いんだそうです。アジの開きがないとなんか忘れものをしたかの感じになる日本人がいるように、キッパー抜きの朝食は物足りない、そう思う英国人もいるのでしょう。
キッパー k ipp er と関係がある言葉に、「レッド・ヘリング」が。赤ニシンは、やはりキッパーを焼いた状態のことです。たしかにレッド・ヘリングは「焼いたキッパー」なんですが。もうひとつ裏の意味があって。「ウソ情報」、または「まやかしの暗示」。たとえば、「そこに怪しい男があらわれて……………」とあると、彼があたかも犯人であるかのように思ってしまう。でも、ほんとうはいちばん怪しくなかった人物が犯人だった、とか。そんな時、「レッド・ヘリング」の慣用句が使われるんだとか。
「キッパー」に話を戻しますと。ファッション用語のひとつでもあります。「キッパー・タイ」これは1960年代のロンドンで流行った、幅広ネクタイのこと。
では、どうして「キッパー・タイ」なのか。実はこれ、シャレからはじまっているのです。キッパー・タイを売り出した人物の名前が、マイケル・フィッシュだったから。「魚」にひっかけての「キッパー・タイ」だったのですね。
キッパーが出てくるミステリに、『上級副支店長』があります。2017年に、ジェフリー・アーチャーが発表した物語。
「ブラウンシュガーを添えたポリッジ、塩をしたキッパー、トースト、マーマレード、湯気の立つ熱いコーヒー………………」。
これは主人公がスコットランドのホテルでの朝食風景。また、『上級副支店長』には、こんな描写も出てきます。
「タータンのキルトを身にまとった巨軀が、撃鉄を起こしたショットガンを小脇に立っていた。」
この背景は、ハイランドの奥地という設定になっているのですが。
ところで、「キルト」 k i lt は、英語。スコットランドのゲール語では、
「フィール・ベグ」 と呼ばれます。
まあ、とうぶんキルトを穿く機会はなさそうですが、キッパーはぜひいただきたいものであります。