夕食と白麻

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夕食は、愉しい時間ですよね。自宅での夕食の支度に、どれくらいの時間をかけるのか。これもまあ、人それぞれなんでしょうが。

「私たちは一日のおよそ半分から三分の二の時間を食事のしたくについやすので……」

レイモンド・チャンドラーは、そんなふうに書いています。1949年3月16日付の手紙の中に。「私たち」とは、レイモンドと奥さんのシシーを指しているんですね。シシーはレイモンドの十八歳年上で、病がち。シシーの体調が優れない時にはレイモンドが料理を作った。シシーはふだんから、外での食事が好きではなかった。

シシーの本名は、パール・セシリー・ボーエン。それはそれはお美しいお方で。ふたりは、1924年に、結婚。シシーが1954年、八十三歳で世を去るまで、レイモンドは熱愛したという。
その証拠に。といえるのかどうか。物語に出てくる私立探偵の名前を。レイモンドは「マロリー」にしようと。で、シシーに相談すると。「マーロウがいいわよ」。それで、フィリップ・マーロウが誕生したんですね。
フィリップ・マーロウが出てくるミステリに、『シンデレラ』が。エド・マクベインが、1984年に発表した物語。

「この男を私立探偵だと考えるのはむずかしい。サム・スペードやフィリップ・マーロウとはまるで違う。」

これはオットー・サルスマンという私立探偵についての感想。また、こんな描写も。

「スタッグは、パステルカラーのズボンに同色のオープンシャツ、そして白い亜麻布のジャケットを着ていた。」

これはハリー・スタッグという男の着こなし。ホワイト・リネンなんですね。さて、白麻のジャケットで、夕食に出かけるとしましょうか。

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