トオマスとトルコ帽

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トオマスは、わりあい多い名前ですよね。たとえば、トオマス・マンだとか。トオマス・マンは、いうまでもなく、ドイツの偉大なる作家であります。
トオマス・マンのお父さんは、ヨハン・トオマス・ハインリッヒ・マンで、ドイツのワイン商でもあったという。いずれにしても、裕かな商家だったことは、間違いないようです。
ドイツのベルリンで、トオマスに会う話。もっともアメリカ人のトオマスなのですが。

「米人トオマスと逍遙園を周り、帰途その居を訪ひ、「オッペンハイマル」酒を酌みて談笑する。」

森 鷗外著『独逸日記』に、そのように出ています。明治十八年八月二日のところに。
「オッペンハイマル」は、ドイツ、ラインランド、オッペンハイム産のワインのことかと思われます。
森 鷗外が留学のために、ドイツ、ベルリンに着いたのは、明治十七年十月十一のこと。
『独逸日記』を読む限り、よく学び、よく友に会っている様子が伝わってきます。また、カフェにも。

「パウエルの骨喜店に会し……………。」

明治十九年二月十九日の『独逸日記』にそう書いてあります。森 鷗外は、カフェを「骨喜店」と書いているのですが。
森 鷗外が「骨喜店」にしばしば足を運んだのは、『独逸日記』に明らかです。もちろん、コーヒーもよくお飲みになっています。
また、森 鷗外は、仮面舞踏会にも。

「われは飯島と共にトルコ帽を戴き、黒き仮面を被りて入りぬ。」

明治十八年一月八日の『日記』に、出ています。「トルコ帽」というからには赤だったのでしょうか。
あの森 鷗外がかぶるくらいですから、時には私も……………。

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