ブランデーとフロッグ

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ブランデーは、蒸留酒のひとつですよね。ごく簡単に申しますと、白ワインを蒸留したエキスが、ブランデーなのです。大量の白ワインからごく少量のブランデーが生まれるのは、そのためであります。
生まれたままのブランデーは無色透明。これをオークの樽で寝かせることによって、飴色に色づくわけですね。
食後酒として、寝酒として、最適であります。コニャックの二十年物などは、まさに「飲む宝石」でありましょう。
ブランデーをもう少し幅広く考えますと。原料が白ワインと限ったものでもありません。
サクランボを原料とした、「キルッシュヴァッサー」なども、蒸留酒。ドイツのキルッシュヴァッサーは、有名でしょう。

「………キルシュを振りかけた焼き料理……………………。l

金井美恵子が、1973年に発表した小説『兎』には、そんな一節が出てきます。金井美恵子は、「キルシュ」と書いていますが、おそらくキルッシュヴァッサーのことでしょう。
もっとも「ブランデー」の言葉自体は、明治の頃から用いられていたようですが。

「………麥酒火酒打ち交ぜて自らも聞こし召し……………………。」

福地櫻痴が、明治三十年に書いた『大策士』に、そのように出ています。
福地櫻痴は、麥酒に「ビール」、火酒に「ブランジー」のルビをふってあるのですが。たぶん、ブランデーのことでしょう。
ブランデーが出てくる英國の小説に、『マーティン・チャズルウイット』があります。
チャールズ・ディケンズが、1844年に発表した長篇。

「………ビールの樽、水で薄めた温かなブランデーの樽……………………。」

これは客間の様子として。英國の、1840年頃には、「水で薄めた温かなブランデーの樽」があったのでしょうね。
余談ではありますが。英國ならではの俗語に、「ギャムプ」 g am p があります。ひと言で申しますと、「太巻き傘」のこと。
ディケンズ作『マーティン・チャズルウイット』に出てくる、助産婦、セアラ・ギャムプが、降ろうが照ろうが常に持ち歩いているところから、生まれた言葉なのですね。
まあ、それはともかく。『マーティン・チャズルウイット』の中に。

「青い軍隊式の上衣は、顎のところまでボタンとフロッグがつけられていた。」

これはとある紳士の装いとして。
フロッグ fr og。または「フロッギング」 fr ogg ing とも。絹紐飾りのボタン留めのことです。もともとはルーマニアなどの軍服のデザインから生まれたとの説があります。
どなたかフロッグをあしらった上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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