クリイムとクローシェ

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クリイムは、生クリイムのことですよね。あるいはまた、ミルクのエキスとも言えるでしょうか。
生クリイムから生まれるものに、ホイップ・クリイムがあります。生クリイムを泡立てますと、やがてホイップ・クリイムが生まれるのです。生クリイムと空気との藝術品でありましょう。
たとえば、バームクーヘンを食べる時の友になってくれます。さらにはパンケーキを食べるときに、ホイップ・クリイムを添える人もいるでしょう。とにかくホイップ・クリイムの用途は広いのであります。

「夏は氷盤に苺を盛つて、甘き血を、クリームのなかに溶かし込む所にある。

明治四十年に、夏目漱石が発表した『虞美人草』に、そんな一節が出てきます。
これはいったい何の話をしているところなのか。「詩はどこから生まれるのか」について。

「………薔薇の香と、葡萄の酒と、琥珀の盃より成る。………」

漱石は、「詩はどこから生まれるのかについて、延々と語っているのですね。そしてまt、こんなふうにも言ってくれるのであります。

「漆に似たる石炭に絹足袋の底を暖める所にある。」

なるほど。とりあえず、絹足袋を履くところから、はじめるべきでしょうか。

「………機嫌のよい梅村は、コーヒー茶碗に浮いたクリームをゆっくり掻きまぜた。」

昭和二十七年に、武田泰淳が発表した『風媒花』に、そのように出ています。もちろん珈琲にクリイムを添えることもあるでしょう。単なるミルクではなくて。フランスでいうところの「カフェ・クレエム」でしょうか。
武田泰淳の『風媒花』を読んでいますと。

「………中井さんは三亀松の声色もへたなくせに……………。l

そんな科白も出てきます。ここでの「三亀松」は、二代目柳家三亀松のこと。昭和の漫談家。三亀松の都々逸は名人級でありました。三亀松の声色はなかなか難しいものです。
クリイムが出てくる小説に、『探偵ブロディの事件ファイル』があります。イギリスの作家、ケイト・アトキンソンが、2004年に発表した物語。

「………婦人会のメンバーがクリーム・ティーを振る舞い、……………。」

これはバザーでの様子として。ここでの「クリーム・ティー」はイギリス式の言い方で、スコーンと紅茶のセットのことなんだそうですね。まあ、たしかにスコーンにはたいていクリイムを添えますから。
この文章の少し前に

「………別のテントでは鉤針編みのショールや毛糸のベビー服が展示され……………。」

バザーですからいろんなテントが並んでいるのでしょう。
「鉤針」は、「クローシェ」cr och et のことでしょうか。針先が輪の状態になった編針。ただし必要に応じて、輪は開くようにもなっているのですが。
クローシェはなにもショールだけとは限りません。ニット・タイも多くはクローシェ編みによって仕上げられます。
どなたか絹の堅いクローシェ編みのネクタイを作って頂けませんでしょうか。

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