フェズとフェルト・ハット

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フェズは、いわゆるトルコ帽のことですよね。小さいバケツを逆さにしたような帽子のことであります。正しく、「フェズ」fez 。
その昔、トルコの人びとが好んで愛用したので、その名前があります。

「すると丁度其処へ、真赤な土耳其帽をかぶつた、痩せぎすな大学生が、一人、金釦の制服に短い外套を引つかけて、勢ひよく外からはいつて来た。」

大正八年に、芥川龍之介が発表した短篇『路上』に、そんな一節が出てきます。この場所は、当時の東大になっているのですが。うーん、赤いトルコ帽の生徒がいたのでしょうね。
芥川龍之介も学生時代には、やはり学生帽をかぶつたに違いありません。
そして大学を卒業してからは、ソフト帽が多かったようですが。

「帽子は時に黒の中折を、時に茶のソフトを被る。」

芥川龍之介は『私の生活』と題する随筆の中に、そのように書いています。
「中折」も、「ソフト」も、結局はフェルト・ハットなのですが。フェルト・ハットだからきそ、中折にもなり、ソフトにもなるわけですから。ー
でも昔の紳士はなぜフェルト・ハットをかぶったのか。
ひとつには、礼儀正しくなるから。挨拶ひとつにしても、両手で帽子を脱いで、頭を下げるわけですからね。やはりフェルト・ハットをかぶっていた方が、紳士になれそうな感じがありそうですね。

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