グリーグの曲は美しいですよね。たとえば、『叙情小曲集』だとか。
エドヴァルド・ハーゲループ・グリーグは、1834年6月15日の生まれ。ノルウェイ、ベルゲンで。でも、グリーグの先祖はスコットランドなんですってね。十八世紀のなか頃、スコットランドからノルウェイに移ってきたんだとか。
グリーグが好きだったのが、カエル。小さなカエルの置物を蒐めるのが、趣味だったとか。グリーグはいつも小さなカエルの置物を身につけていた。このカエルを身につけていると、舞台でもあがることがなかったらしい。
グリーグは十五歳で、ドイツに留学。ライプツィヒ音楽学院に。ところがライプツィヒに着いたその日に、ホームシックに。すると宿の主人がグリーグ少年を慰めてくれた。
「ほら、ごらん。ここにも君のふるさとと同じ太陽が昇り、同じ神様が見てくれているんだよ。」
それでグリーグはすっかり元気に。グリーグで有名なのは、『ペール・ギュント』でしょうか。同じノルウェイのイプセンの戯曲に想を得たもの。
イプセンは物語の中に没頭する人だったみたいですね。イプセンの代表作に、『人形の家』が。イプセンは『人形の家』を書いている時。奥さんに。
「今日、ノラがやって来てね。」
奥さん、驚いた。驚きながらも。「まあ。それで、どんなお洋服でしたの?」これに対するイプセンの返事。
「うん。青いウールのドレスを着ていてね……」
たぶんここまで入り込むと、良い戯曲が生まれるんでしょうね。
イプセンは1908年、八十歳で世を去っています。それより前、1889年の夏に。イプセンはチロルの避暑地で。十八歳の美人に会って、恋心を。そのウイーンのお嬢様の名前は、エミリエ・バルダーハ。後になって、イプセンの書いた多くの恋文が発見されたという。
イプセンの話が出てくる小説に、『戯曲研究家』が。サマセット・モオムの短篇ですね。この中に。
「イプセンはきっと、筋を思いつくのに桁はずれの難儀をしたんですな。」
これはモオムの分身と思われる語り手の科白。会話の相手は。中国人の、文学教授という設定。教授はなにを着ているのか。
「あたたかな日なのに、彼は厚手のスコッチ羅紗地の、三揃いというヨーロッパ式の服を着込んでいた。」
もちろん、スコッチ・トゥイードなんでしょう。
さて、スコッチの服を着て。グリーグを聴きに行くとしましょうか。