二枚目は今でもよく使う言葉ですよね。私は使うばかりで。一度も、使われたことありませんが。
二枚目は、ハンサム、美男のことですね。どうして「二枚目」がハンサムの意味なのか。これはどうも江戸の、歌舞伎からきているんだとか。
江戸期には、歌舞伎の看板を八枚に書いた。一枚目の看板に、主役。二枚目の看板に、色男。三枚目の看板に、道化。四枚目、中堅。五枚目、悪役。
ざっとそんなわけで、「二枚目」が美男子の別名になったんだそうです。二枚目で、しかも演技派で、そんな俳優がいるんだから、参ってしまいます。たとえば、森 雅之。森 雅之はすこぶる付きの、二枚目でしたね。
森 雅之の代表作は。ちょっと選ぶのに、迷ってしまいますが。ひとつの例として、『挽歌』。『挽歌』の原作は、原田康子。原田康子著『挽歌』は、1956年ベストセラー。それを1957年に、五所平之助監督が、映画化。主演は、久我美子と、森 雅之。森 雅之が、建築家の、桂木節夫の扮して好演。
『挽歌』での森 雅之は、名演。と同時に、誰もが二枚目であることを認めた映画でもありましたね。
森 雅之のお父さんが、作家の有島武郎。叔父さんが、画家の、有島生馬。血は争えない、というのでしょうか。
森 雅之のお父さん、有島武郎の代表作が、『或る女』。『或る女』は、大正八年に発表された小説。『或る女』は、明治四十四年に描きはじめられたんだとか。
『或る女』は、佐々木信子をモデルにした物語。佐々木信子は、明治の進歩的だった女性なんだそうです。『或る女』の中に。
「厚外套にくるまって肥った博士と、暖かそうなスコッチの裾長の服に……」
これは田川博士夫人の様子なんですね。ここでの「スコッチ」は、ウイスキーではなくて、トゥイード。
少なくとも大正のはじめまでの「スコッチ」は、飲むほうではなくて、着るほうだったんでしょう。
さて、トゥイードの服を着て。二枚目を探しに行くとしましょうか。